第8章 Pandora
『……ここは』
「船の上だ」
聞くまでもなく、辺りは波の音で溢れていて、船は元帥と私以外静まり返っている。ここは船以外のどこでもない。しかし普段の軍艦でもない
起きて突然悟った出来事に、自分は案外冷静だった
「ガープから、自身のことは聞いたな。」
『はい』
「お前の存在は最高機密事項故に、秘密裏に移送している最中だ。知っての通り、その力は非常に危険であり、世界に知られてはならない代物だ」
……じゃあ、なぜ私は生きている
殺すのであれば、もうとっくに死んでいておかしくない。わざわざ移送しているのには、すぐには殺せない理由でもあるのか
それともまだ、私は生きられるのか
「率直に言おう。五老星の決断はルノウェの力を海軍のものとして利用せよとの事だ。」
『!』
無理だ
すぐに浮かんだ答えは、元帥の言葉を真っ向から否定するもの。にも関わらず、センゴク元帥は続けた
「今日益々強大になっていく海賊に対し、我々の力は未だ拮抗状態だ。我々が常に打ち勝たねば人々の安全と平和は保たれない!」
『そのために、この力を利用するというのですか』
「そうだ」
ひとまず命は繋がれる
それがわかったというのに、目の前は依然真っ黒に染まっている
手足の枷が余計固くなったような気がした
「情けない話だが、若い海兵の育成が追いついていないのもまた事実……ましてや、若く優秀な海兵をこのまま見殺しにするのは、我々にとっても不利になるだけだ」
『ですが…この力は』
「有無は言わせない。お前には3ヶ月の期間しか与えられていないのだ」
『え、……』
3ヶ月しか、与えられていない?
まさかその間に、この力を制御せよと言っているのか
そして、期限を過ぎれば、この命は一体……
「ルノウェの力を物に出来なければ、待ち受けているのは今度こそ死だ。」
答えは自分よりも先に元帥が告げた。
3ヶ月でこの力をものにしなければ死ぬ。
力を使いこなせても、海軍の犬として一生を尽くす以外、生きる道はない。
…………そんなことのために、
『私は、…』
わかっていたことなのに、強く頭を揺さぶられる