第7章 追ひ人
進行方向に立ち塞がったマルコを、振り払うように無理矢理ストライカーを起動させた
「っ、エース!」
「頼むッ、行かせてくれ……ッ」
ここで行かなかったら、チエに二度と会えないかもしれない。やっと固まった想いも言えないまま、あの時のことも謝れないまま..........、、
頭の中に浮かぶのは、ベッドの上で顔をぐちゃぐちゃにして泣くチエ
そうさせたのはDr.ヘイブンだけじゃない。チエのプライドを踏みにじったのは俺だ
何よりも大切で、側にいたくて、守りたかったはずなのに。
でも、次は間違えない
「行かなきゃ、ならねェんだ」
既に進み出したストライカーは、マルコの飛ぶ速度を凌駕する。噛み締めるようにそう呟くと、ふつふつと湧いてくる使命感。滲み出る後悔も、想いも、今は全部炎に変えて
ジジイをあそこまでさせるほど、もう英雄ガープの肩書きじゃどうにも出来ないほど、事態は緊迫している。
もう、チエを助けれる奴は、俺しかいないんだ
「エース……」
既に炎の光くらいしか見えなくなってしまった、彼の背中に呼びかける。本気で追えば、追いつけたはずなのにマルコは翼を途中で止めた
本来なら1番止めなければならない役割なのに
エースのあんな必死な顔を見たら、考えるより先に体は追うことをやめてしまった。行かせてやりたい。そんな思いが勝ってしまって
「悪い、親父。止められなかったよい……」
船に戻ると一部始終を見ていた親父や皆の元に降り立って、頭を下げた。止められなかったと言うより、俺は行かせてしまった。それがこの後どんな結果になるのか、誰も分からない
「エースを行かせた責任は俺が取るよい……だから、アイツがチエの所へ行くこと、許しちゃくれねェか。親父」
俺にとってエースは大事な弟分。そして、短い期間だが一緒に航海を共にしたチエもまた、俺は気に入ってしまった。
詳しい事情は知らない。エースがどこに行ったのかも。本来なら行かせるべきじゃない
だけど、
あんな必死な弟の背中、押してやらねェ兄貴がどこにいる