第7章 追ひ人
「ほんとうに、……チエは、死ぬのか?」
何故か俺の口元はわなついて、いつになく消えそうな声が耳に木霊する。それが自分のものだと遅れて気づいた。
口に出せば、その実感はおそろしくも全身を襲った
チエが、死ぬ……?
そんなの嘘だ
けれど、ガープは否定も肯定もせず、無言のまま視線を更に落とした
……そいうことのなのか
本当にチエは、、
「お前なら、可能性はあるやもしれん。まだ間に合うかもしれんのだ…ッ」
絶望しかけている俺に、ガープは肩を強く掴んで訴えた。海軍の英雄が、一海賊である俺にこんなにも切実に懇願しているなんて、世界中の誰が信じるだろう
いや、今はそんなことどうだっていいんだ
「わしも長居はできん。お前たちの進路はチエの予測から割出した。じゃが、そのことも、白ひげに関する他の情報もチエは軍に他言しとらん」
だから追っ手は気にせず進め。
その言葉を片耳で聞いて、エースは自分のストライカーに飛び乗った
まだ頭の中の情報は纏まらないまま。それでも体は思考を引き摺りながら進む
ビブルカードを掌に乗せれば、西の方に向かって微かに動いた
「……アイツが死ぬなんて、嘘だ…っ!!」
起動したストライカーは、これまでにない速度で海を走り出した。炎の出力も今までの比ではない。
さっきまで呆然としていた意識が、エースの中でだんだん焦りに変わり、無意識に炎の出力が強くなっていた
船から見守っている誰もがその切羽詰った様子に気がついた。エースがいつになく焦っているのを見て皆が彼の名を叫んだ。けれどすっかりチエの事で頭がいっぱいになったエースはすぐには気づけない
「エースッ!」
「ッ!?」
不意に目の前が青一色に染まって、ようやくエースは周りの声に気がついた
海の上で急ブレーキをかけると、船先を軸に半回転ほどする。まだチカチカする視界を瞬きで何とかしながら、声の主を見上げた
「何があった!一旦船に戻って、事情を説明しろよい!」
「…っ、悪ぃ時間がねェんだ!!!」
チエの命が、危ないって
もし遅れたら二度と会えなくなる。……サボのように、
「俺はチエを助けに行く...ッ!」