第7章 追ひ人
「親父!すまねぇ、ジジイが」
「お前を追ってきたのか?相変わらず破天荒な野郎だァ」
口調は穏やかだが、彼の纏う覇気はそうではなかった
研がれて洗練されたナイフのように、静かでいて鋭い覇気
それは恐らく、海を隔てたガープにも伝わった
途端にピタリと砲弾が止むと、空気が痺れるのが分かった。
親父は先頭に立っていた俺の前に立ち塞がるようにして、その巨躯をめいっぱい張った。
空気が震えているのがわかる。それが徐々に荒ぶり、2つの勢が中央の海でぶつかった
まるで空と海を引き裂くほどの、力の衝突が今目の前で起こっている
これが、本物の覇気のぶつかり合い、、
2人の覇気が衝突し合って、波が大きく揺れる。何人もの部下が、耐えきれず床に伏した
自分も立っているのが辛いほど、2人の覇気に圧倒されている
しかしそれも数秒後にピタリと止んだ。
「……要件はなんだァ、ガープ」
「お、親父」
親父とジジイの間で、いつの間にか初手が終わっていて、親父は既に要件を聞く姿勢を示している
自分が原因だと言うのに、目の前に立つ背中は心做しか庇ってくれているようにも見えた
俺たちのことを息子と呼んでくれて、大事にしてくれる。俺たちがどこまでもついていきたいと思う、そんな懐のでかい人なんだと改めて感じた
「久しいな、白ひげ!そこのエースに用があってきた」
「首根っこ捕まえようってんじゃねェだろうな」
「違うわい。そいつに話さにゃ、ならんことがあってな。チエはお前にも世話になったと言っとったぞ」
拡声器越し聞くチエの名前。それだけなのに肩に力が入る。
チエの名前を出したことで、親父も周りもなんの話をしにここまで来たのか想像がついたようだ
この船に乗り、そして突如軍に戻ったチエの事だ
「……親父、俺行ってくる」
俺の申立に、親父は黙ってこちらを見た。数秒目を合わせ続け、一息吐くと彼は呆れ顔で言った
「好きにしろ」
半ば呆れにも近い声のトーンだったが、許しを得た途端体は反射的に動く。噛み締めるように礼を言ったあと、すぐさま自分専用のストライカーを海へ降ろし、そこへ飛び乗った