第6章 折れた翼、落ちた羽
今、1番の問題は、私がルノウェの力に覚醒してしまったことだ。
……と言っても、私自身その変化に気づけていない
正直なところ、咄嗟に力が発動してしまって、あの時も何が何だかわからなかった。覚醒したと言われても、この力をどう使ったらいいのかわからない
そもそも、本当にルノウェの力が使えるのかも……
けれど、私の体が再生したことやヘイブンを倒した電撃は、自分が起こしたことなのだと、
……信じたくはないが、確かにある実感がその事実を突きつけてくる
あの痛みは紛れもなく、本物だった
それ以上も以下もない。ただの事実
(…まだ薬のせいで幻覚を見ていたと言われていた方がマシだった)
どうしてもあの光景が頭から離れず、かと言って起き上がる気にもなれなくて、ごろんと寝返りを打ってみる
自分がそんな大層な力を持っていたなんて知らなかった。ルノウェのことも、母のことも
私は何も知らなかった
古代兵器に匹敵すると言われているのなら、この名で気づく人がいてもおかしくはなかったはずだ。なのに、周りにもそして私自身も気づかなかった
その理由をガープ中将に尋ねると、彼は淡々とその答えを教えてくれた
数十年前、政府は研究の結果、ルノウェ一族は伝説上の作り話であったと公表した。世間の混乱を避ける為だ。
その裏で、一族に関する情報の流失は一切禁じられ、海軍の中でも真実を知っているのは当時上官だった者だけとなった。
今となってはガープ中将、お鶴中将、そしてセンゴク元帥くらいしか知らないそうだ。だから、私は本名を名乗っても誰にも気付かれずにやってこれたらしい。