第6章 折れた翼、落ちた羽
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船は、日を跨ぐことなく夜のうちに本部へと帰還した。
気分転換と、一族の話をするために海へ連れてきたらしく、話をしたあとはしばらく好きにさせて貰えた。
しかし、結局は私もガープ中将も軍の犬。海軍の中でガープ中将ほど自由な人はいないだろうが、それでも縛りはある。特にガープ中将は散歩がてら海に出ていいような人じゃない。本当は任務も育成も多忙なお方なのだ。
そういうわけで、軍艦は夜の港へと到着した
「沙汰が決まるまで、しばらく部屋から出るなよ」
帰還するなりガープ中将が言った言葉は即ち、軟禁を意味していた。
思い出したかのように言うが、わかっていたなら船の中で言って欲しかった…、それならもう少し考えて時間を使ったのに
私は新しい別の部屋に移され、最低限の衣服とラルーの所持だけを許された
ガープ中将はというと、重要な用があるとかでしばらくここには来れないと言っていた。
完全に缶詰状態
『モノじゃないのにね、お前も……私も』
真新しいベッドに背を預け、ラルーの体を撫でる
部屋には監視用の電伝虫が、天井の角に1つと入口の真上に設置されていた。外に見張りはいない。ここは本部の中でも端に位置する部屋で、普段は人も近寄らないところだ
故に、海兵に対する軟禁部屋としてごく稀にだが使われている。
恐らく、私がこの部屋に入れられたことは、他の一般海兵には知られていないだろう。私が知らせる術もない。
疑われている
ガープ中将から少し聞いた程度だけれど、どうやら上官たちは小娘ひとりが白ひげの船から帰還したことが信じられないらしい
しかも、Dr.ヘイブンの首を手土産に帰還したとなれば、怪しまずにはいられないんだろう。
何せ、ずっと正体不明のままでしっぽを捕えるのでやっとだった敵だ。それを白ひげ海賊団から横取りしてきたとなれば、普通タダでは済まない
そもそも、白ひげの船で捕虜としていた事自体疑わしいのだろう
(海軍が思っているほど、海賊は悪ではないのに)
思わず心の中で漏れた言葉に、チエはハッとした。
自分は海兵なのに、何を考えているんだ
しかもこの部屋は監視付き。疑いに確信を持たせるような言動は命取りになるんだ。
ちらりと四隅を見ながら、心の休まらない部屋にため息を零した。