第6章 折れた翼、落ちた羽
しかし、力に覚醒した以上、これまでのようにただの海兵でいることは難しい。今度いつ力が発動するかわからない。
怪我が治るだけじゃない。訳の分からない力が無作為に誰かを襲ってしまうかもしれないんだ
そして、いつ世間にルノウェの力が実在すると知れ渡るかもわからない。
そんな“危険因子“をこのまま隠し通せるはずがない…
……だからセンゴク元帥が、五老星と私の取り扱いについてこれから話し合いを行うらしい
話し合うと言っても、答えは大凡の検討が着く。その答えに2度目の溜め息が零れた
“危険因子は即刻処分“
悪い芽は早いうちに摘んでおいたほうが後々のためになる。
もし私が五老星なら、そう思う
『…………っ』
死にたく、ない
声にできないのが、もどかしい
四隅の監視用電伝虫を睨み返すことすら出来ない。見られている以上、何も外には出せない
ただ、虚しく拳を握りしめるしか私には出来ない……、
もし、殺されなかったとしても、もう自由には出歩けないだろう。きっと監視と監禁の生活が待っているだけだ
…あの薄暗い洞窟の中で、何度も痛めつけられた時のように
『……っ、』
脳裏を過った記憶を塗り替えるように、片腕を額に乗せた。腕の重みが、僅かだがあの記憶から意識を逸らさせてくれる
暗い。目の前が何もかも
私はただ、自分の体のことを知りたかっただけなのに。