第6章 折れた翼、落ちた羽
『正義、か…』
ガープと話したあと、チエはしばらくその場に座り込んでいた。
話し始めた時はまだ日が傾きだしたばかりだったのに、辺りはすっかり茜色。
まだぼんやりとした頭の中に、バサリと風を切る羽の音が鳴り響く。
ハッと意識を取り戻して、空を見上げた
外を自由に飛ばせていたラルーが、ガープがいなくなったのを見計らって戻ってきたみたい
『おかえり。って、何これ』
「ク」
手元に降り立ったラルーは、嘴で何かをくわえていた。赤い実のついた枝だ。
『これ、食用の木の実…どこからこんなものを?』
食料庫から取ってきたのだろうか?
いや、基本船に積む食料はかさばらないよう枝に付いている実は外して運び込まれる。それによく見ると、枝の切り口がとても鋭利で、まだ切られてから差程時間が経っていない。
『もしかして、お前が取ってきたの?』
「ク、クク!!」
そんなことはどうでもいいから、と言うように腕にぐりぐりと頭を押し付けてくる。しまいには口にくわえた枝を私の腿の上に置いた
『早く食べろって?せっかちね』
「キュ!」
じっと見つめてくるのが、急かされているようでとりあえず実を口に運ぶ
『…懐かしい味』
つるつるした表面に歯を立てると、ぷちりと中の果汁が飛び出した。酸味の後にほんの少し甘みがある
昔は、森に入って小腹が空くと、こんな実やら、果物やらを取って食べたっけ。
高いところや崖にあるものは、エースとサボが取ってきてくれて……
『……はぁ、私何やってんだろ』
そこまで思い出して、重々しいため息を零す。
好きで追いかけてきたのに、逃げたいだなんて。
一体なんのためにここまでやってきたんだ
……いつまでもぐだぐだ言っていても何も変わらない。だから私は海兵になったんだ
エースに置いていかれて、言い訳しか出来ないことが嫌で、女であることを言い訳にするのが嫌で強さを求めた。そして、ルノウェの血を引く者としての業を背負った以上、それを投げ捨てる訳にも行かない…。
私は、向き合わなきゃいけないんだ