第6章 折れた翼、落ちた羽
「それでも海兵として生きるか」
ガープの黒い目は、真っ直ぐ私を貫いた。
その言葉に、時間も呼吸すらも止まる
……それを聞くために、いや、それだけじゃない。こうして人払いをして、私の話を聞き、一族のことを教えるために船に乗せてくれたのか
『─…正直、私は今回のことでどうして海兵になったのかわからなくなりました』
最初は、エースに置いていかれたことが悔しくて、見返してやりたくて海兵になった。
どんどん先へ行くエースに、もうこれ以上置いていかれたくなくて、その一心だった。
けれど、実際再会してみれば実力の差なんて全然縮まっていなくて。自分は海軍の中でもまだまだ下の階級にいたのに、エースは白ひげの船で2番隊の隊長として立っていた。
それでもやっぱり、追いつきたい気持ちは変わらずにあった。そして、エースの秘密を知る人間として、エースのことを守りたいと思った
エースのために、私にできることをしたい
なら、海兵としてエースの秘密を守ろうと。
けれど、Dr.ヘイブンに目を逸らしていたことを、突きつけられた
それは、エースを好きだと言う女の私だ。女だから、置いて行かれた。好きだから隣に立ちたいと思うのに、その気持ちが私の足を引っ張っているのだと。結果的に、男と女の壁はそう簡単には越えれるわけもなく、自分の弱さが引き立つばかりだった
エースを好きだという気持ちは、私の原動力でもあった。なのに、エースとイスカさんとの話を聞いた途端、いつもの自分じゃないくらい冷静を保てなくて、振り回された
考えるなと心の中で唱えれば唱えるほど、私はそのことで頭がいっぱいになっていく
そうしてヘイブンの手中に落ちてしまったんだ
……私の弱さは、この安定しない気持ちのせいだと、わかっている。わかっていても、処理しきれないんだ。思うようにならない心の様に、私だってずっともやもやしている
胸の中が、気持ち悪くて仕方がない。こんなの、いつもの自分らしくない
そう思えば思うほど、焦りに似た何かが全身を駆け巡った