第6章 折れた翼、落ちた羽
『ガープ中将は、…母の最期をご存知なんですか』
「…まぁな。お前は何も覚えとらんのか」
『はい』
小さな頃の記憶を遡ると、断片的に出てくる映像はいくつかある。けれどそれが母なのかはわからない
どんな顔で、どんな声だったのか
なにも覚えていない
どうして、いなくなってしまったのかさえ……
「そうさな、お前がもう少し強くなったら教えてやる」
頭を強く撫でる手が、これ以上は教えないと言っているようだった。
自分よりも上背のある彼から撫でられると、いつも上から押しつぶされそうになる。けれど、その圧もこうして最後まで教えないのも、全部私に気を使ってくれたのかと思うと、気分は悪くなかった
『…この力や、名前はわかる人には分かってしまうのですか』
「あぁ。今回のことで、もう気づき始めてる人間がおる。元々わしとセンゴクだけが知っておったが、いずれバレること。…わかっていた」
それでも海兵になった方が、アリエのような思いをしないだろう。いざとなれば、海兵としてつけた実力で逃げることも出来る。
そう考えたガープは、私の海軍入隊を許してくれたそうだ。
「…これから、上の連中と話し合いお前の処遇を決めねばならん。このまま海兵として生かすか、それともアリエと同じ道を辿らせるのか。上の連中もアホではない。アリエの時にルノウェの力で痛い目を見とる。」
酷い実験をされた聞いたけれど、ガープの話を聞くに母もただでは終わらなかったらしい。
何せ、その実験の結果、古代兵器に匹敵すると知ったんだ。いくら政府お抱えの科学者とはいえど、古代兵器と同じように研究も調査も禁じられたはず。
それを今さら私で再開するなんてリスク、犯せるはずもない。ならば、危険性のあるものをどうするか
『…つまり、処刑』
「現場には降りてこない臆病者たちだ。言いそうなことではある」
海軍に戻れるかどうかの心配をしていたのに、それより先に自分の命の心配をすることになるなんて、、