第6章 折れた翼、落ちた羽
数ヶ月後、やっとのことで降りた面会の機会に、彼女は涙を流して助けを求めた。
「……ガープさん、、もう、私は.......人間じゃないっ!私の家族を殺した海賊みたいに、、簡単にあの人たちを殺してしまいそうだわ…っ!!!」
ボロボロと涙を流しながら、ガラス戸の向こうで叫んだ。やつれた顔に、痩せ細った体。心はそれ以上に傷ついていた。なのに服から覗く肢体には傷一つなく、アリエが泣く度に細かい傷跡まで薄くなっていった。
ルノウェ一族の能力を目の前にしても、わしにはただ1人の子供が泣いて助けを求めているようにしか見えなかった。
両親や仲間を殺され、死ぬ思いをして生き延びた。なのに、まだ危険にさらされ、能力に目覚めてしまった。
毎日好き放題に体を弄られ、心を貪られていく。
“ただ普通に生きたかっただけなのに”
そう泣き叫ぶ彼女を、わしはなんとしてでも助けたかった。
……だが、どんなに上に掛け合っても、海兵として助けることは出来なかった。このままでは、立場を忘れて、アリエのいる施設に乗り込んでしまうだろう。日に日に焦りと怒りが満ちていた。
そんな中で、ある事件が起きた
それは海軍本部の実験施設に、ある海賊が乗り込み、アリエを誘拐するという大事件だった
海軍本部管轄の施設に乗り込み、無事逃げた海賊など、いるわけがない。軍の信用に関わる事件に加え、保護という名目で捕まえておいたルノウェ一族の生き残りが世界のどこかに放たれた
とすれば、混乱を招かないために、必然とこの事件は伏せられることになった。
わしは好機だと思った。軍の施設では助けられなかったが、海賊ならば力ずくでいい。
そうしてすぐ、その海賊団を追う任務に自ら着いた
「だが、アリエを見つけるまで5年の月日がかかった。厳密には、わしは見つけられなかった」
『それは、どういう…』
ガープは、拳を強く握った。
「……わしが、アリエを見つけたときにはもうお前が産まれていて、アリエは…亡くなっていた」