第6章 折れた翼、落ちた羽
「わしがルノウェ一族について知ったのは、その数年後の事じゃった」
海賊たちの間で、「悪魔の実の能力ではない、不思議な力を持った人間がいる」という噂が広がった。
海軍もその能力を持つ者の調査を行い、ひとつの記録と重なり合うことがわかった。
それはいくつかの島で発見された碑石に共通するルノウェという人物で、解読した結果、数百年も前に残されたものであると分かった。
その碑石に書かれているルノウェと、噂になっている人物の特徴が一致していたのだ。
その特徴というのは、外見は極一般の体型にもかかわらず、常人ならざる怪力を宿していたり、自然を操ったりできるということだ。ルノウェという者は、岩を砕き、海を真っ二つに割ったという。また、ある碑石には、「折れたはずの足が、すぐに治った」という記録が残されていて、この治癒の能力は噂になっている人物も有していた。
他にも、足がとても早く、身のこなしが軽やかなど能力なのかよく分からないものまで逐一細かく報告された
政府の見解としては、恐らく数百年以上前から存在する、超人的な身体能力と、自然に対する不思議な力を宿した一族だろうということだった。
しかし、あまりに情報が少なく、希少性が高いことから政府は彼らの名称を定めることにした。
碑石にあった、ルノウェの血族という意味でルノウェ一族というふうに統一した。
すぐさま調査隊が編成され、危険と見なされれば即刻処刑しても構わないというお達しまで下った。
そして調査隊は、噂になっていた人物を保護という名目で捕らえてきた。
それが、数年前に助けた少女、アリエだったのだ
まさか、噂になっていたのがアリエだとは思わず、その当時は言葉を失った。
アリエは何も悪いことをしていない。身の危険を感じた時にその能力が発動してしまっただけで、世界中にその力のことが広まり、追われる身となってしまったのだ。その結果捕まり、ここ海軍本部へ連れてこられてしまった。
科学者たちがこのような力を見逃すはずもなく、あれよあれよという間にアリエは政府お抱えの科学者たちの手に渡った。そこでどんなに実験をされていたのかは言うに耐えない。