第6章 折れた翼、落ちた羽
隣で泣く私には目もくれず、ガープは午後の薄い空を見ていた。
「エースには会えたのか」
こくりと、頷く。
ぼろぼろと溢れる涙を拭いながら、震える声で言った
『エース、強くなってて、最初は怒ってたけど、わかってくれたし、、たくさん、助けてくれた』
それが少し嬉しくて、悔しかった。
エースに助けられる度、自分は、何のために海兵になったのか、わからなくなってしまった
『ヘイブンと戦った時も、エースが来なければ一生、あのまま…っ』
思い出すだけで噎せ返る、あの血の匂い。自分の体とは思えない、残酷な光景と言葉にし尽くせない痛み
視界がチカチカしてきて、床にへたり込んでしまう
「その話はするな。辛いことは、思い出さんでもいい」
いつになく優しい祖父は、隣に座って私の背中をさすった。さする手が余計涙を誘って、こんなに泣きじゃくるのはいつぶりだろうかと頭の片隅で思う
エースに置いていかれた日もこうして泣いていた。
強くなりたい
そう思った時から、どんなに辛い訓練も涙は零さなかった。我慢してきた。耐えてこれた。
それが全部全部積み重なって、堰き止めていたのだろうか
今は涙が溢れて仕方がない
……こんなの、求めていた自分じゃない。
そんな気持ちと一緒に涙が溢れてくる
『あんなに、、頑張ってきたのに』
積み上げた努力は呆気なく追い抜かれ、力に叩きのめされた。今の私は、、弱い
『違う、違うの……私なんてまだまだなのわかってた』
本当は言い訳なんてしたくない。ただひたすらに努力していた自分に戻りたい、今の自分から抜け出したい
「……焦らんでいいと言うとろうが。お前も、エースもなぜそう急ぐ」
『……っエースが、急ぐから…!』
半分やけになって答えた。いつだって私は追いつこうと必死なのに、私のことも気にせず行ってしまう
私が他の何よりも、エースを1番に想っていても、エースはきっとそうじゃない。私一人の想いじゃ、エースの願いには全然届かない