第6章 折れた翼、落ちた羽
チエが去った後、元帥室では難しい顔をした男が2人残っていた。
ガープとセンゴクである。
「……18だったか」
「ああ」
「もう少し持つかと思っていたが、、この辺りが限界だろうガープ」
そう語り掛けるセンゴクに対し、ガープは以前険しい顔のままだった。それを見てセンゴクは諦めに近いため息をつく
「あの子はもう気づき始めている。自分の能力の秘密に。海兵という道を進むのなら、尚更隠したままではいられないだろう」
チエには、本人も知らない秘密がある。ガープはそれを知った上で極秘裏にチエを育ててきた。彼女が海兵になるその時まで、誰も彼女の持つ力を知らなかったはずだ
しかし、チエ本人が自身の身体にまつわる奇妙な体験をしたことで、その秘密がチエ自身だけでなく、外部に漏れる可能性が浮上してきた
「チエの持つ力は、恐らく古代兵器にも匹敵するもんじゃ…。わしら海軍も、政府も手出しは出来ん。」
古代兵器
それは神の名を冠する古の兵器で、島一つを消し飛ばすとも、世界を海に沈めるとも言われている。
その兵器の在り処がポーネグリフに記されている
あまりに危険なものなため、世界政府はポーネグリフの解読や古代兵器に関する研究全てを禁止していた
「だが、あの一族の力の存在を知れば必ず悪用しようとするやつが現れる。……あの子の父親のように」
「………」
センゴクの反論に、ガープはそれ以上何も返さなかった。
チエのことは、育てた彼がよく知っている。そしてその父親のことも。
「“15年前、ルノウェ一族は滅んだ“
その報告を未だ疑われたことは無い。だが今後チエ自らが能力を発揮してしまえばバレることだ。……早めに対策を取っておけ、ガープ」
「……わかっとるわい」
ただぶっきらぼうにそう返して、ガープは重たい腰を持ち上げた。
いずれは真実をチエに話さなければならない。だが、今のチエの状態はとても不安定だ。これから明かす事を受け入れられるだろうか
白ひげの船で、きっとエースにも会ったんだろう
あの子が心を動かす理由は、いつだってエースにある
「…ったく、世話のかかる孫じゃわい」