第6章 折れた翼、落ちた羽
3大将が先に退出すると、次はお前だという空気が元帥室の中に満ち溢れる。ガープも扉から出ようと片足を伸ばしているところだった
『あの、、』
けれど、これはどうしても聞かなければならないことなのだ。
海軍のトップならきっと知っている
この体のことを、あの時起きた現象のことを
「なんだ」
『報告書にはどうしても書けなくて、伝えていないことがあります』
ずっと気になっていた。
私が普通じゃないのは、何となくわかっている。けれど何がどう違うのかはわからない。
『ガープ中将にも、お尋ねしたいのです』
そう言うと、ガープは扉を閉め、大将たちが座っていた椅子に深く腰かけた
『私は、Dr.ヘイブンと対峙した時…酷い傷を負いました。』
目の前のふたりは、至って真剣な目をして聞いていた。けれど、その怪我の具合を伝えると、2人揃って目を見開いて言葉を詰まらせた
『ヘイブンの薬のせいで、幻覚を見ていると思ったのですが、ヘイブンを仕留めた一撃があまりに現実離れしていて、今も…混乱しています』
言葉にすればするほど、あの時の景色が鮮明に浮かんで息苦しい
『……私の体は、何か違います。それが何なのか、お二人ならご存知ではないかと、思いまして』
後半になるにつれ、萎んでいく声。胸に溜まったドロドロの不安が、今にも溢れそうで、ぎゅっと唇を噛んだ
「……君の体も適正な検査をしよう。Dr.ヘイブンは薬のプロだ。どんな効果があるかもわからない。まずは部屋で安静にするように」
『はい…』
それだけ言われて、結局元帥室から返されてしまった。
頭がおかしくなったと思われただろうか。
それでもやっぱり、自分が自分でなくなってしまったような不安と、確信に似た何かがごちゃ混ぜになっている。
知りたいと思う反面、その事実を受け入れたくないとも思っている
ひとまず、あの場所で自分が言うべきことは言った。それだけでも今日は良しとするべきなんだろうな
ふと、廊下の窓から青空を横切るものが見えて立ち止まる。
『あ』
白銀の翼が、よろめきながらも青空を舞っている。すぐに窓を開けて、指笛を鳴らした
『おいで、ラルー』
指笛でこちらに気づき、すぐさまこちらへ飛んでくる。
ここに居場所はなくても、私にはこの相棒がいる。
そう思うだけで、息苦しさは和らいだ気がした