第6章 折れた翼、落ちた羽
『船への襲撃は潜水艦を使ったものでした。主に船の下層部への損害があり、恐らく援軍を遅らせる目的だったと思われます。』
口ではこういったものの、船への被害はほぼゼロだった。あの時、攫われたのは私一人で、大方クルーと間違われたんだろう。けれど、拘束されていた設定なので、そこは誤魔化すしかない。
大将や元帥の前で、自分はとんだピエロだと嫌に感心する
『街では1番隊と2番隊、それに加え16番隊隊長イゾウがヘイブンの部下と戦闘。白ひげ海賊団は以前彼らの島でヘイブンが麻薬を広めたことで敵対関係にありました。それ以降ヘイブンの元へ調査隊を送り込んでいたらしいのですが、ヘイブンの部下に乗っ取られ、内部崩壊を狙われたようです』
そこまで言い終わると、元帥は頷き、私に戻っていいと言いかけた。止めたのは、サカズキさんだった
「おどれ一人でDr.ヘイブンを倒したんか」
突き刺さるような視線は、嘘偽りを一切許さない強い意志をぶつけてくる。今まで誰も捕まえることの出来なかった相手を、こんな小娘がやったのか、そう言いたげな目だ。
『……トドメを刺したのは私です。ヘイブンは2番隊の隊長と戦い、逃亡した所を、追って横取りしたまでです。』
嘘は言っていない。ヘイブンにダメージをあたえたのはほとんどエースで、最後の一撃が私のものだったというだけだ。あの雷撃すら自分の力と思っていいのか、定かではないが…
『手ぶらでは軍に戻れないと思ったので、拘束するつもりでした。ですが、弱っていたとはいえ、私には捕らえる程の力量はなく、このような結果になりました。』
あくまで正当防衛。それを全面に出しつつ、自分の功績にも繋げたい。そんな野心の見え隠れする発言にサカズキさんは「まあいい」とぶっきらぼうに言った。
「ヘイブンの件はもういい。あとは検死に回し、事態の収拾をモモンガ中将に一任する。君の処遇については追って沙汰を出す。それまで待機せよ」
『はっ!』
これは体のいい謹慎処分てところか。殉職した者が、生きて帰ってくるという前例のないことに、上は対処しなければならないのだろう。その結果によって、私は軍にこのままいることが出来るのか、もしくは殉職で得た地位に付けるのかが決まってくる。
本当は地位なんて、どうでもよかったのに