第6章 折れた翼、落ちた羽
ドクン、と心臓が大きく脈打つ
けれど頭の中は案外冷静なものだった。
『はい。入隊した日付から最後の任務までのことを全て記憶しています。モモンガ中将から伺った程度ですが、その能力者は相手の血液から情報をコピーし、その皮を複製できるものです。私の過去や記憶までコピーできる力ではないと思います。』
元帥は、しばらく私を見つめた後、視線を後ろの方へ向けた。
「どうだ、ガープ」
「どうだも何も、ここに連れてきた時点で決まっとろうがい」
(どういうこと?)
頭の中で、怪訝に思っているとあちらから説明してくれた。
「最初にお前のことをよく知るガープに迎えに行かせた。その時点で本人でなければ即刻拘束せよと命じたのだ」
つまり、この部屋に通されたということは
「もう君がニセモノだって疑う必要がないってことだねぇ〜」
代弁してくれたのは、窓側に横一列に並んだ3大将の1人、ボルサリーノさんだった。やけに間延びした口調が、緊張感をほんの少し和らげる。
「聞いていた通り、聡明で肝の座った子だな。」
「当たり前じゃ、ワシが育てた海兵じゃからな」
どうやらガープと元帥はそれなりに砕けた間柄らしく、ただの同期ではないみたいだ。長年一緒に仕事してきた仲だからか、身内であるガープに私が本人かどうか確かめさせる辺り、信頼も厚いんだろう。
「モモンガ中将から報告は受けている。その箱を受け取ろう」
『はっ』
直接渡せという意味なのか、元帥は動く素振りを見せなかったのでトランクを元帥の机の上に置いた。
元帥はこちらに見えないよう中身を確認したあと、それを閉じて言った
「大まかなことは聞いたが、もっと詳しく知りたい。白ひげ海賊団の情報は我々にとって極めて重要なものだ。奴らの船での出来事を報告しろ」
そのために3大将まで呼んだのか。
今、海軍の中で白ひげ海賊団に匹敵すると言えば、この3人が真っ先に思い浮かぶはずだ。いずれは訪れる決着の日の為に、情報を得ておきたいという意味もあるのだろう
『はっ。白ひげ海賊団の船では捕虜として投獄されておりました。見張りと外の声からDr.ヘイブンとの因縁関係にあると知り、抗争の隙に逃げてきました。』
「その抗争の様子は」
地響きのような低音ボイスに肩が跳ねる。横から飛んできた声の主は、赤犬ことサカズキ大将であった。