第6章 折れた翼、落ちた羽
軍艦とは違い、一面白に統一された壁
床に敷いてあるカーペットは、その先の部屋がいかに厳格なるものかを指し示しているよう。
ガープ中将の後ろを黙って着いていく。彼越しに伝わる強烈な覇気に、次の一歩が徐々に重くなって、見えない壁に押し返されている気になる。まるでこれから敵と退治するとでも言うかのように、殺気が先から押し迫ってくる
無論、そのような覇気の中でもガープは平気な顔で歩く。こちらも白ひげの覇気に耐えた甲斐あってか、気を飛ばすほどじゃない。それに、これから向かう場所にいる人は、こんな小娘1人を全力で殺しにかかるほど雑魚ではないからこの殺気も、威嚇程度なのだと思う
先を行くガープが、扉の前で立ち止まった。
「ここから先は、お前1人の戦いじゃ。わしは何も口出しせん。1度決めた道じゃ、腹くくって行ってこい」
『はい』
力強く頷き、真っ白な扉を3回叩いた。
中から「入れ」という声がして、私はドアノブに手をかける。尋常ではない圧を受けながらでは、ドアノブを握る手が汗ばむのも当然だ
自分を落ち着かせるように、大きく息を吸った。
ゆっくり吐いた後、ゴクリと息を飲んで、扉を押し開いた
そこに集うは3人の大将と、
「帰還できて何よりだ」
海軍本部元帥、またの名を仏のセンゴク
軍の最高勢力が一度に会することは滅多にない。それも、自分が引き起こした案件で招集されるなんて
ただ座っているだけなのに4人とも圧が凄まじい。
『はっ!チエ・ルノウェただいま帰還致しました!』
足を揃え、敬礼をする。それさえも、震えが走って仕方がない。何とか声を張って顔に緊張を出さないように平然を装う
怪しいと思わせたら最後。私は海賊の手先だと疑われて終わりだ
「チエ少佐、君が殉職したという報道は知っているかね」
『はい。存じております』
「モモンガ中将からの報告で大まかな事情は聞いた。まず今回の我々の任務で、Dr.ヘイブンという情報の少ない敵の正体を暴くことが出来た。その上で、奴の仲間の中に君の姿をした悪魔の実の能力者がいたそうだな」
『はい』
真正面から突き刺さる、鋭い視線。そして部屋の右側の窓に横1列に並んで座った3大将の目がこちらに向く
「君が、チエ少佐本人であると証明できるか」