第6章 折れた翼、落ちた羽
一度死んだ海兵が、元いた地位も、居場所もないのに帰ってきた。周りからはいつも妬みの対象として見られて、女だからと馬鹿にされていたこの場所に。
"敵の船に潜り込んだ死に損ないの海兵"
そんなレッテルを貼られるとわかっていて、Dr.ヘイブンに身も心もズタボロにされて尚この場所へ、自分の足で戻ってきた。
白ひげの船でのことが、ずっと頭から離れなくて、エースの顔が離れなくて
何が正解か分からないまま、あの居心地のいい場所から逃げてきた。
けど、違う。帰ってきたんだ
私はここに、もう一度海兵として生きるために戻ってきたんだ
誰も生還しても喜んでくれる人はいないと思っていた。なのに、どうして忘れていたんだろう。私の大切な家族の一人を
『……じいちゃん、、っ』
どうしようもなく涙が溢れてきて、止められない。目の前の祖父もまた、抱きしめたまま何も言わずにそれを許してくれていた。
血の繋がりはなくても、祖父として師として自分を包み込んでくれた存在に、抱え込んだ気持ちが溢れ出した
『じいちゃん、私…っ、もうわかんないよ…!』
女である私が、海兵として生きること
白ひげの船で、よくしてもらったこと
Dr.ヘイブンにされたこと。自分がこんなにも弱くなっていたこと
エースとのこと
何もかも答えが出ないまま、迷宮に迷い込んでしまった。自分でも、どうしたらいいのかわからなくなってしまった
私はあの時、、どうすれば良かった、
ここへ戻ってきて本当に正解だったのか
けれどガープは祖父の顔のまま言う。
「……お前の生還の連絡を聞いて、上の連中が度肝を抜かれとったわい。話はそれを片付けてからじゃ」
今にも心の内が雪崩出てしまいそうだったけれど、ガープは涙を拭ってそれを止めた。その手がまだ頑張れるな、と言っているようで私は小さく頷く。
思わぬ優しさに、不意打ちを食らってしまったけれど、ここに戻ってきたからにはやらなければならないことがある。
(まだ、弱音吐くところじゃない)
涙を拭い、不安を飲み込み、鉄の仮面を付け直す。
海賊でも海軍でも同じ
自分の地位は己で勝ち取らなければならない
その戦いに、きっと今から向かわなければならないんだ