第6章 折れた翼、落ちた羽
『うん、決めた。ラルーにしよう』
「キュ?」
響きでピンと来たから、ラルー。
小首を傾げているので、もう一度ちゃんと呼んでやる
『ラルー』
「キュゥ!」
すると、自分の名前だと理解したのか、大喜びで返事をした。鳥なのに、すごく感情豊かな子だ。
頭を撫でると、こちらの様子を伺いながらぎこちなく頭を差し出した。慣れていないんだろうな。もしかしたら、この容姿のせいで親兄弟にも見捨てられてしまったのかもしれない
『私は、ラルーの傍にいるよ』
「!」
やっぱり言葉がわかるのか、目を見開いたあと羽をバタバタさせてきゃっきゃとはしゃいだ。相当嬉しいみたい
そんなラルーの顔を見て、よかったとほっと胸を撫で下ろす。
傍に居るということは人間側のエゴだし、縛り付けるようなものだから。少なくともラルーにとっては喜ばしいことだったみたいで、ほっとした
動物の居場所は基本的に自然の中。けれどもしかしたらラルーは淘汰される側にあって、人間界でも商品としてしか扱われなかったのかもしれない。
1人でずっと、辛い思いをしてきたのかもしれない
(……私には、エースやみんながいてくれたんだよね)
ふと、ラルーと自分を重ねて昔を思い出した。
父は酒とギャンブルに溺れ、虐待も日常茶飯事。母親がどんな人だったのかさえ、知らない。普通とは違う生まれだった。けれど、ダダンたち山賊の元では同じような境遇のエースや、ルフィやみんながいてくれた。
そんな、私にとっての安寧の他を離れて1人。海軍という場所に飛び込むと、そこには上司と部下だけで仲のいい同期は存在しなかった。周りからは嫉妬と物珍しく見てくる視線だけで、あの中で認められるのは実力しかない
海軍という場所は、私にとって仕事場で、色のない記憶ばかりだ。それが海兵になるということだと思っていたのに、白いクジラの船でもっと深い繋がりがあると知ってしまった。家族の絆がどんなに強固で、温かいものか知ってしまった。
エースやルフィ、ダダンたち山賊のみんなが、自分の家族だと素直に言えるようになった。それはきっと彼らの絆に触れたからだ。あの船の上で、自分はひとりじゃない。そう思えた
そして私はまた、自分の止まり木から飛び立って海軍に戻ろうとしている