第6章 折れた翼、落ちた羽
ああ、ダメだ。私はこういう顔に、めっぽう弱いんだ
それに、おいでと言ったのは私だし
責任をもって育てよう
「私は気にしないが、、」
『……モモンガ中将には自分から頼んでみるよ』
軍艦の責任者は私ではなく、モモンガ中将なのだ。ダメと言われたら、軍艦を降りて自力で戻ろう。
「かまわん。」
『「…………。」』
諸々の不安はあっけからんに振り払われ、難なく飼う許可を貰えた。モモンガ中将は嫌な顔ひとつせず、即答してくれたので肩透かしを食らう羽目になった
『よかったね。』
「キュ!」
マントをチラリとめくると、どこか嬉しそうに鳴いた。初めての場所に怯えていたようなので、船に戻ってきてからもマントの中に入れていたのだ
(か、かわいい……ッ)
昔から鳥の目のギョロっとしたところが少し怖かったけれど、こうも懐いてくれると怖さなんて消し飛ぶ。むしろこの大きな瞳も可愛く思えてきた
いち早く部屋に戻ってマントを脱ぐと、脱いだマントごと鳥を包み込んでベッドに降ろす。自分は座らず、各部屋に常備してある救急箱を、ベッドの下から取り出した。
この子を腕にとめた時思いっきり爪が刺さったのだ。さほど深い傷でもなく、血も乾いているのですっかり忘れていた
シャツの袖を捲り、濡らしたタオルで血を拭ったあと清潔な包帯を巻く。隼はその様子をビクビクした様子で見つめていた
血が苦手なのか、先程から色んなものにビクビクと怯え倒している。どうやらとても臆病な子らしい。
『あ、そうだ。おまえの名前決めなきゃね』
救急箱を元の場所に戻してから今度はちゃんと布を分厚く巻いて、反対の腕に乗せた。腕の上は落ち着くのか、少し安心したような表情
目を、じっと見つめて考える。澄んだ青い瞳の中には、隼独特の真っ黒で大きな瞳孔がある。私の目を見つめ返しながら首を傾げる姿は、本当に人間の子供みたいだ