第6章 折れた翼、落ちた羽
「ヘェ、あの頑固さは昔からなのか」
「まぁな」
普段は我儘を言わないくせに、変なところで意地っ張りで頑固。折れるのはいつも俺の方だった。
「そういえば走るで思い出したが、お前が海に落ちた時も、船まで戻ってくるのが異様に速かった」
「泳ぎも得意なのか?」
「さぁな…。ただ、得意っていうよりは、うーん、不思議な感じがするんだよなぁ」
本当に身体能力が高いだけなんだろうか。Dr.ヘイブンと対峙した時、チエが発揮したあの翡翠の雷鳴や、傷が綺麗さっぱり無くなっていたことがどうにも引っかかるのだ。
その事は素直に報告したが、ヘイブンが幻覚を見せるような薬を投与させたのではないか、という意見に固まった。俺の体からも薬物の反応があったし、奴と戦うだけでも何かしらの薬を盛られた可能性は高い。
しかし古傷が消えていたことや、あの電撃はチエ自身が引き起こしたものと思えてならないのだ。
それを言葉で上手く説明できない、、
違和感だけが、頭の中でモヤとして残る。
「俺も変だと思うよい。潜在的な能力にしても、説明がつかないことがまだある。」
「って言うと?」
「ティーチの証言にあった、縄が勝手に切れたってやつだよい」
前にチエがティーチたちに絡まれ、マストに縄で縛り付けられた時のことだ。エースが海に落ち、チエは縄を抜け出してエースを助けに飛び込んだ。
問題はどう抜け出したか、という話だ。縄は断面も綺麗に切られていて、ちぎったり関節を外したりして抜けたのではない。かと言って、チエも刃物は没収されていたし、あの時助太刀した者はいなかった。
誰か助太刀したやつがいて、名乗り出ていないだけなのだと思っていたが、エースからの報告であったことを含め、マルコも違和感を感じたようだ
「チエは能力者じゃないよい。特殊な武器も持っていなかった。身体能力だけでなく、何か……特別な力を秘めているんじゃねェのかよい」
もしそうだったら
どうなるんだ。チエは本当に海軍に戻ってよかったのか。それとも、この船にいたら、何かマズイことでもあったのだろうか
「あぁ、余計訳わかんなくなった」