第6章 折れた翼、落ちた羽
いつになく戸惑いの色を含んだエメラルドの瞳。
その目に思わず息を飲んだ
【……ずっと、いて欲しい…私の傍に。家族、みたいな…そんな人が欲しい】
家族
それは、俺とチエが持っていないもの。
初めて聞いた、チエの心からの願いはチエがずっと感じていた寂しさの表れだった。
本当の家族への憧れ
俺にはサボやルフィがいる。けどチエには、腹を割って話せるような仲間はいないのかもしれない
(俺が、そこにいたら)
チエが1番信頼出来る相手に、俺がなれたら。そんな考えが頭をよぎった。チエの願いを、流れ星よりも俺が叶えてやりたい、そう思うほど俺の頭はチエでいっぱいになった
【俺がいる。お前の傍にいる。それじゃ、ダメか……?】
真っ直ぐ彼女目を見て言う。今思えば、置いていったのになんて無責任なことを言ったんだろうと思う。けれど、あの時の俺は軽々しく言ったつもりはなかった。
……1人にしない、それは今の俺も同じ気持ちだ
【だめじゃ、ない】
【そっか】
なんだか嬉しくて、ししっと笑うとチエはまだ目を丸くしたまま、俺の顔を見つめていた。ハトが豆鉄砲食らったようなその顔も、無意識にかわいいと思ってしまう
これが“好き”なのか?
無意識に探すのも、そばに居たいと思うのも、願いを叶えたいと思うのも全部。お前のことを、考えている俺は、、
【明日、サボとルフィと海に行くんだ。……一緒に、行くか?】
【いい、の?】
ダメなわけあるか。そう言いそうになってやめた。
少しでも笑って欲しい、そんな思いがふつふつと湧き上がってくるのだ
【おう。一緒に行こう】
【うん…!】
(…ぐっ、、)
ぱあっと輝くような笑顔は、夜の暗闇でも眩しいほどで、口をぎゅっと結んだ
(……っっすきだ、、、)
【エース?】
【べ、つに赤くねェよっ、】
【?】
口では動揺を誤魔化そうとしたものの、変なことを口走ってしまう。心臓はさっきよりも大きく早く鐘を打っていた
自分の気持ちを自覚してしまった。
これが好きだと、認めてしまった。
……俺は、チエを特別に感じているんだ