第6章 折れた翼、落ちた羽
【木の上で何してるの?】
【なっ、なんでもねェよ!サボ、行くぞ】
【お、おう。じゃーな、チエ】
【?。ご飯時には帰ってきてねー】
背中に投げられた言葉に返信することなく、そそくさと木からおり、サボを連れて走り出す。何だかチエの近くにいると、変に胸騒ぎがするのだ
【どうしたんだよ、エース】
【え、いや……】
その後なかなか言葉が出てこなくて、自分でも説明がつかなかった。胸騒ぎと言っても嫌な予感とかではなくて、自分でもわかるくらい焦ってしまうのだ
【最近、チエが眩しいことないか?あいつの周りだけ変なんだよ】
【………エース、お前それって…】
隣を走るサボが、いつにも増して怪訝そうな顔を浮かべるので、こちらも仏頂面になってしまう。
【もしかして、チエといる時苦しくなってないか?】
【…言われてみればそうだな、、】
【はぁ…、、お前って意外とアホなとこあるんだな…】
【はぁ?どこがだよ】
アホという単語にカチンと来ていたが、今思い返せば確かにアホだ。サボがあんな呆れ顔をしていたのにも頷ける
【だって、それってチエを“好き”ってことだろ】
【ッ!はぁ!?スっ、ススキって、俺がか!】
【そうだよ、どう見たってそうだろ】
本当に分からなかったのか!と責め立てられるが、そんなこと分かるはずがない。誰かを好きになるなんて、思ってもみなかったのだから
自分はずっと、1人だと思っていたのだから
【お前、意外とナイーブなとこあるよなぁ…】
【あ?】
【なんでもねーよ。でもまぁ、確かにチエは可愛い。】
【お前もそんな目で見てたのかッ!】
【違ェよ!ただの一般論だよ、一般論!!】
そんな言い合いをした後、山賊の根城へと戻ると夕飯のいい匂いが外にまで立ち込めていて、腹の虫が鳴る。それと同時に、この飯の作り手を思い出さずには居られなかった。
頭に浮かべてしまえば、すぐ思考は先程までのサボとのやり取りで染まってしまった