第6章 折れた翼、落ちた羽
泣くほど嫌だった。
その可能性が頭に浮かんでますます気分は落ち込む。更に追い討ちをかけるのは、ずっとポケットに入ったまま返しそびれたこれだ。
「なんだよ、それ」
「…チエのペンダントだ。大事なものらしい」
チエと同じ、翡翠色に輝くそれは透き通っていて綺麗だ。どこの誰に貰ったかもわからないコレが、自分への好意が薄れていることを証明するようで憎たらしい
「……昔は、お互いのことなんて言わなくてもわかったんだけどな」
普段昔語りをしないエースが、珍しく自分から口を開くので、サッチは興味津々に耳を立てた。
「俺も混ぜろよい」
そこへ割り込んできたのは、不死鳥マルコ。エースが持っていた未開封の瓶をサッと奪い取り、栓を開ける。
マルコの登場で、エースは少し口を噤む
しまった、と再び思ったサッチが、やんわりと話の続きを促そうした。
「お前、前にチエはもっと女の子らしかったって言ってたよな。お前たちはどんな風に過ごしてたんだよ」
割り込んできたマルコは、瓶で口を塞いで空気を読む。それとなく会話の流れを掴むべく、一時聞き手に回った。
エースは少し考える素振りをして、一呼吸開けてから、話し始めた。
*
チエはの幼い頃は、それはそれは可愛くて、むさ苦しい山賊集団に一輪の花が咲いたようだった。服装も、大体いつもスカートで言葉遣いも荒くない。
俺とルフィが山へ出かけても、チエは家で裁縫をしたり洗濯をしたりと、真反対の生活を送っていた
性格自体は、今とあまり変わらないかもしれないが、仕草や表情は今よりもっと柔らかかった
【見ろよチエ!デケェ魚釣ったー!】
【わっ!すごいね、ルフィ!3人で取ってきたの?】
【ほぼオレとサボだけどな】
ムキになるルフィを宥めながら、くすくす笑う顔や、たまに腹を抱えて笑う姿が今でも脳裏に焼き付いている