第6章 折れた翼、落ちた羽
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一方、チエが去った島ではようやく白ひげの船がログポースを貯め終えたところだった。
一同、甲板に集められ、この船の船長であり、父親であるエドワード・ニューゲートの前に集っていた。
「親父、今回のDr.ヘイブンの件は海軍に譲るんですか!」
「アイツは、俺たち白ひげ海賊団に逆らった!」
「俺たちの手でアイツの首を取らなくていいんですか!」
息子達が憤りを激しく表す中、1番隊隊長が前へ出た。
「落ち着けよい、お前ら。……親父、俺も今回の結論には納得がいってねェよい」
周囲を落ち着かせながら、落ち着き払ってマルコは言う。チエへの勧誘を知っているからこそ、納得のできない部分もあった。
そんなマルコの求めに対し、白ひげは杯を傾ける。
「……おめェらの言い分はよく分かる。だが、あの首はチエへの手土産にしてやった」
そのまま白ひげは続ける。
「…俺ァ、どうも気に入っちまったらしい。娘になれと誘ったが、フラれちまった。グララララララッ!」
豪快に笑い飛ばす白ひげに対し、一同は目を丸くした。自分たちの信頼する父親は、今確かに『娘』と言ったのだ。これが目を見開かずには居られまい。
「「「「「 えぇぇえええっ!!!」」」」」
思わず声を上げて、驚く隊員たち。
動揺は隊長たちの間でも起こる。重症を負ったイゾウ以外は甲板に出揃っていて、それはエースも例外では無かった。初めて聞く発言に思わず耳を疑う。
白ひげの傘下には、女海賊もいるし、この船にはナースたちも居る。しかし、白ひげが娘として認めた女は中々いない。しかも、その女は海兵ときた。皆の動揺は最もだった。
「む、娘って…本当ですか、親父!」
「海兵ですよ!?」
海兵だから、誘いを断った。その思考は正しい。けれど、エースやエースの事情を知る隊長たちは、チエが出ていった理由が他にある気がしてならない。
エースはともかく、周りから見ても両想いだったのだから。
「あほんだらぁ、海兵だろうが海賊だろうが、関係ねェ…みんな等しく海の子だ」
白ひげのその言葉に、だれも反論しなかった。自分たちが息子であるのも、誰もが海の子であり、白ひげが父として受け止めてくれるからなのだ。自分の父親が決めたことに、これ以上反論する理由はなかった。