第6章 折れた翼、落ちた羽
白ひげとの交戦は禁止。あくまで情報を得ることだけを目的に接触を許すと書かれていた。だから、あの時軍艦が白ひげの船に接近していたのか
街へ降り、予め諜報員からの情報を元にヘイブンの部下を捜索。敵内部には、血液から皮を作り、自由自在に変装する能力者と、精神を入れ替える能力者がおり、他は無能力者。
精神を入れ替える方は、一度体に入るとその体を遠隔操作できるという力も持っており、ヘイブンの薬とその能力を併用して白ひげの諜報員を操作していたそうだ。
白ひげの首を取って、七武海になると豪語しただけあって、厄介な能力者揃いだ。
報告書は更に続き、白ひげ海賊団についても書かれていた。
不死鳥マルコの負傷や、イゾウが能力者によって成り代わられていたことなどが書かれていて、白ひげ海賊団も振り回された様子が記してあった。
ここには書かれていないが、今回の戦いは白ひげたちの家族の絆が仇になったようにも感じる。仲間への絶対的な信頼と、忠誠心が操りやすく、一度介入出来てしまえば、簡単に家族内崩壊を招き入れる可能性だってあった
この報告書を見て、誰もこのことに気づかなければいいが……
もし誰かが、この弱点にもなりうる絆に付け込んだら、白ひげ海賊団は本当に危ういかもしれない
「そうだ、これモモンガ中将が」
そう言って渡されたのは、一枚の紙。見覚えのある様式にすぐに察しがつく
「報告書だ」
『だと思った。』
2人、顔を見合わせてクスリと笑うと私はペンだけ借りて、ベッドのサイドテーブルの上で書き出した。
ジャックにやられた傷を手当してもらったこと、一時は命を救われたが捕虜として捉えられたこと。そこで聞いた、白ひげとDr.ヘイブンの関係性について淡々と記していく。
あくまで海賊と海兵。接触したことは書かずに、必要最低限のみ記す。
Dr.ヘイブンとの接触の事項まで来ると、ついペンが止まってしまう。
素直に、書き記すことはできない。
自分の身に起こったあの摩訶不思議な出来事は、傷跡すら残っていない自分の体が現実だと証明している。
考えるまでもなく、人には言えないことだと悟った。