• テキストサイズ

花の詠【ONE PIECE】

第6章 折れた翼、落ちた羽




熱いお湯を頭から浴びて、まとわりつく感情ごと洗い流す。

大丈夫、ただ戻るだけ。
いつも通り仮面をつけて、エースがいない日常に戻るだけ。

そう言い聞かせようと、心の中で復唱する。

……思わず唇を噛んだ。鼻の奥から、ぶわりと何かが溢れてきそうで…止められなくなりそうで。


(本当は……、、)

それと一緒になって、溢れそうになる心の奥の声。

…ダメだ。本心を、押し殺せ。
じゃなきゃ、海兵としてやって行けない。

何度も何度も、大丈夫だと自分に言い聞かせる。

(…でも、なんのために、私は……)

不意に浮かび上がる素直な心が、自分の首を絞めてしまう。白ひげの船で、甘やかされて、私はこんなにも弱くなったのか。こんなにも、迷いを生じて、葛藤して、、

【君は弱さを断ち切るために海兵になった。なのに、エースに会ってまた弱くなった】

やめろ、なんで今更出てくる

死んだはずの、Dr.ヘイブンの声が頭にこびりついている。もう二度と、聞きたくない、お前の声なんか

【女であること。それ以上の弱さはない。君は、弱さを断ち切るためと言っておきながら、女であることを捨てきれずにいる】

わかってる、、お前の思惑通り薬に溺れて、惨めにもそれを利用した。お互いの気持ちを確かめもせず、ただ自分のエゴでエースを引き止めた。

そんなこと、言われなくたってわかってる……っ

シャワーの水が足元を流れていく。
瞬きの瞬間、忘れられないあの赤い光景に重なって、思わず顔を両手で覆った。

もう、やめてくれ
私の心を甚振らないで
はやく、はやく消えてくれ

私の中から、はやく。
/ 268ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp