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花の詠【ONE PIECE】

第6章 折れた翼、落ちた羽



・*・*・


あれからモモンガ中将は直ぐに戻ってきた。


「ヘイブンの遺体は確かに確保した。立ちに本部へ帰還する!総員、出航の準備をせよ!」

「『はいっ!』」

空がどんどん白くなり、日の出の近さを知らせる。久しぶりの仕事は、上手く体に力が入らなかった。

錨を上げ、船が進むと共に、帆が大きく張られる。ばさりばさりと翼のような音を立てて開く帆を見ていると、私の背中がやけにスッカラカンに思える。軽いと言うより、足りないと言った方がしっくり来そうだ。

「チエ、待たせたな。風呂の用意が出来だぞ。」

『ありがとう。助かる。』

モモンガ中将が出発してから、風邪をひくだろうと言って風呂を沸かしてくれた。共有の浴室スペースではなく、イスカの個室にあるシャワールームだ。それでも、風呂の時間ではないから、1人で沸かすのは大変だったろうに

申し訳ない気持ちを抱えながらも、再びイスカさんの部屋を訪れ、借りたばかりの服も脱ぐ。

シャワーのコックを捻り、浴槽に冷たい水を吐き出させる。次第にシャワーから湯気型立ち上り、準備万端の合図として受け取る。

『……っ、』

まだ、薬が完全に抜けた訳では無いのか、シャワーの細かな水圧を全身に受けて、ぴくりと肩が跳ねる


だめだ、思い出してしまう

初めてだった。あんなのは、、
薬のせいとはいえ、自分があんなふうに乱れるなんて思っていなかった。

……エースも、あんな顔をするなんて知らなかった。


思い出すほど、内側から胸を叩かれるのに、今はそれさえ思い出として閉まっておきたいと思ってしまう

誰にも、あんな顔をするエースを見せたくない。知られたくない。

なんて心が狭いんだろう…
勝手に逃げておいて、勝手に振り回しておいて、自分のものだけにしたいなんて

図々しすぎる

でも……

(……もし、エースが追いかけてきたら)

一瞬浮かんだ考えを、頭を横に振って振り払う。

やめろ、こんな考え。なんのために船を降りてきたんだ。こんな頭になる前に、離れなきゃと思ったんだろうが

私は海兵なんだ。
軍へ戻るんだ

しっかりしなきゃ
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