第6章 折れた翼、落ちた羽
「ッんで、俺を起こすんだよい!自分で行け!!」
マルコの怒りも最もで、彼は数時間前まで手術台の上にいたのだ
「いいじゃねェか、頼むよ不死鳥兄ちゃん」
縋るように腕にしがみつくと、心底気持ち悪そうに振り払う。怪我は確かに不死鳥の炎で直せるとはいえ、疲労もあるし、何よりまだ日が昇る前
けれど、チエが船を降りたかもしれないと聞いて、飛び起きたのも事実だ。
「い、いくぞ」
「おう、さっさと開けろよい」
不機嫌なマルコはついてきたものの、サッチの背中を足蹴にして、物理的に背中を押す
その圧を受けながら、サッチはようやくドアノブを捻り、扉を押し開けた
ベッドには白い塊がひとつ。
油断はならない。抱き合って寝ている可能性もある。
そろりと足を音を消して歩み寄ろうとすると、マルコはそれを追い越して普通に近づいてしまった
「おっ、おい…!!」
小声で呼び止めるも、マルコはつかつかとよって、あろうことかシーツをめくり剥がした
うわっと声を上げながら、両手で顔を覆ったのはサッチ
次いで、寒さに身を捩ったエースが薄ら目を開けた
「ん……」
寝ぼけた彼の隣に、目的の人物はいない。サッチの予想は大当たりだった
マルコは部屋に入る前から、見聞色の覇気で気配が一つしかないことに気付いていた。サッチもよく良く考えれば、マルコの行動は分かったはずなのに、未だにチエやエースへの言い訳をぶつくさ言っている
「大当たりだよい。」
「えっ?」
「は……」
1番状況を分かっていないのは、目を覚ましたばかりのエースだった。隣にチエが居ないとわかると、勢いよく身を起こした
「えっ、は!?なん、え…?」
すっかり混乱したエースに、マルコは脱ぎ捨ててあったズボンを投げつける。
「とりあえず服着ろよい。夢じゃねェから」
呆然と立ち尽くしたサッチを連れて、ひとまず部屋を退出する。
すぐさま服を着たエースが部屋から出てきたが、その表情には未だに混乱した様子が現れていた