第6章 折れた翼、落ちた羽
2人から、今回の任務について大まな説明を受けている時、船の中央の扉が静かに開いた。
「その説明は、私が引き継ごう。他のもの達は下がれ」
『モモンガ中将……!!』
そこには、私を任務に同行させ、少佐という特例昇級させてくれた上官の姿があった。
周り同様に、敬礼をするが、内心は驚きでいっぱいだった。
部下を含め、甲板に出払っていた海兵が皆部屋へ帰っていくと、モモンガ中将は静かに「ついてこい」と告げた。
指示通り、何も言わずについて行く。
彼のあとに続いて入った部屋は、船の最下層……罪人を入れる監房室だった。
モモンガ中将がランプを付けると、中に十数の名鎖に繋がれた者たちを確認する。どの顔も、手配書には乗っていない。
『この者たちは…』
「Dr.ヘイブンの部下だ。今回の我々の任務の本懐は、Dr.ヘイブンを捉えること。だが、目的のやつだけが未だ見つけられていない」
そこまで話終えると、チエの頭の中であの崖の上で起こった、一連の出来事が電流の如く脳内にフラッシュバックした
『っ、、』
思わず、頭を抱えこんでしゃがむと、モモンガ中将は平然と私に問いかけた
「Dr.ヘイブンと接触したな」
『…は、はい』
私の不審な行動から、予測したのだろうか。やけに落ち着き払った様子で、私と同じ目線くらいに膝を着く
「ヘイブンの部下に、相手の血液から皮を生成し、それを被って成り代わる能力者がいた。我々が捉えようとした時には、お前の皮を被っていたのだ」
『え、』
囚われているもの達の顔に、見覚えはなかった。けれど、血を採られたとしたら、最初に白ひげの船から攫われた時か、ヘイブンに拷問を受けた時……もしかしたら、もっと前のジャックと戦った時かもしれない……
気づかないうちに、自分の情報を抜き取られていたかと思うと、背筋がゾッとした
『ヘイブンは、七武海になるために海軍と取引をしたと言っていました』
けれど、ここにはヘイブンの部下が囚われている。
白ひげの船も、戦闘があったとは思えなかったし、この軍艦も同様だった。となると、ヘイブンとの約束は破棄されたことになる。
「それも作戦のうちだ。あちらのコネクションに介入し、話を持ちかけた。……失望したか?」
未だ膝を着いて、こちらを見つめる上官はどことなく肩を落とした小動物のようにも見える