第5章 カ タ チ
思ったよりも、自分の声が弱々しくて内心驚いた。
要件を言うと、白ひげはすんなり中へ入れてくれた。部屋に招くなりはベッドに寝転び、私はその傍にある椅子に腰掛ける。
『……私は、』
ここに来るまで、何度も心の中で復唱していた言葉が、最後の蓋を破ろうとして喉の辺りでつっかかる。
「まだ猶予は2日ある」
しかし、先に口を開いたのは白ひげの方だった。
「……それでも、もう答えを出しちまうのか」
(出さざるを…得なかった)
自分で自分の首を絞めた
自分が今、何に1番苦しんでいるのか分からないくらい、苦しい。
あの時、どうしてもエースを行かせたくなくて…
ここからどうすればいいのかなんて、考えもしなかった
(……もう、どんな顔でエースと会えばいいのかわからない……、、)
チエは白ひげの前で、俯きながら顔を歪めた。
こんなにも感情を表に出すチエを見るのは初めてだった。
抑えようとしても、溢れ出てくるという表現の方が正しい。
普段から、クールでポーカーフェイスのチエが、こんな風に自分を制御できなくなるのは、やっぱりエースが関係しているんだろう。
エースが船から消えたチエを連れて帰ってきたのは聞いている。ふたりの関係に口を挟むつもりは無い。だが、それとは関係なく白ひげがチエを娘にしたいと思ったのも事実
「…そんなどうしようもねェ顔をするな。残念なのはこっちだろうが……グラララ」
白ひげは笑ってくれるが、チエの気持ちが晴れることも無く、余計に視線は下がるだけだった
「……何があったかは聞かねェが…、本当にいいんだな」
チエの視線は下に固まったまま、小さく頭が縦に揺れる
わかった、と返すとチエは雪崩るように扉を開け、出ていった
残された世界最強は、珍しくため息をつく