• テキストサイズ

花の詠【ONE PIECE】

第5章  カ タ チ


──────────
─────
──…


(あ、また……)

意識が浮上するにつれ、身体の倦怠感を感じる。

もう何度となく味わった、目覚めの恐怖
記憶を飛ばしていても、身体があの恐怖を覚えている…

体は重くて、だるい。頭も上手く働かない……

けれど、埋め込まれた恐怖という直感が、働かない頭より鋭く働く

きっと目を開けてしまったら、そこに奴はいるのだろう。あの綺麗な歯を見せて、笑っているのだろう

ああ、いやだと思っていても、一度意識が覚醒すれば嫌でも瞼は持ち上がる

しかし、ぼやけた視界にめいっぱい映るのは、薄ぼんやりと明るいオレンジの光

(あ、れ……)


予想だにしない、暖かな光に瞬きを数回する。

いや、暖かいのは光だけではない。肩の辺りに感じる、重みと温かさ

じんわりと肌を伝って、落ち着く温もり


静かに寝返りを打ち、反対方向を向いた


(エース……)

ぐーすかと気持ちよさそうに眠る彼を見て、ほっと息をつく。けれどすぐに、モヤモヤとした厚い雲が胸の上にかかった


……やってしまった。
薬のせいとはいえ、エースを引き止めたいが為に私は、、

........自分を、女であることを利用した

私自身の気持ちも、エースの気持ちも交わらないまま、身体だけ重ねてしまった

結果的に、イスカさんの所へ行かせずに済んだけれど、
私は、こんな卑怯な真似をしてまで引き止めたかったんだ…

記憶が飛んでいたら、どんなに楽だったろう


じわじわと胸を侵食してくる、後悔と何か
ツンと鼻先を刺激して、奥から雫が溢れ出そうになる。


あんなに女であることを否定しておきながら、結局ヘイブンの言う通りになってしまった

女であること、エースを好きでいること
それを諦めきれず、利用した


ものすごく、惨めな気分だ

……本当に、私は最低だ
/ 268ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp