第5章 カ タ チ
激しい行為の末、チエは意識を手放した。あまりの快感に、一度の交わりだけで何度も絶頂を迎え、ついにはくたりと意識を飛ばし、眠ってしまった
エースは自分の吐き出した欲を綺麗に片付けて、チエの体も濡れたタオルで拭いてやる
まだエース自身は勢いを失わず、熱が籠り続けているが、意識を手放した相手に、そのまま行為を続けられるほどガッツいてない
自分よりもチエの事が心配で堪らない
気絶するほど辛かったんだろう
早々に脱がせた血塗れの服はゴミ箱に捨てた
…見ているだけで、腸が煮えくり返ってくる
ヘイブンによって、重症を負わされたはずなのにチエの体は綺麗なまま。腕や脚にあちこち残っていた傷跡も綺麗すぎるほど、まっさらな肌へと戻っている
…奴の話が本当なら、チエはあの大量の血溜まりを作るほど……それこそ死ぬほどの傷を負わされたに違いない
なぜその傷がないのか、崖で起こった不思議な現象はなんだったのか……
結果的に、あの電撃のようなものでヘイブンは倒せたようだし、チエにも怪我はなかった。
……ただ、
今は意識を手放して眠っているが、この薬の効果も、チエが負った心の傷もどれ程なのかわからない
(……起きるまで、傍にいよう。)
外のことは仲間に任せ、エースもそのままチエと同じベッドに入る
肩までシーツをかけると、先程までの行為は嘘のように綺麗な寝顔だけが残った。相変わらず寝顔は子供の頃のままで、どこか少しほっとする。
さらさらの肌は少し日焼けして、髪の毛も長くなった。所々猫っ毛のような、柔らかくうねる髪があって肌を擽る。
昔の自分は、飛び跳ねるほど喜んだだろう。
けれど、今は、、
チエと心を通わせた訳ではないから、純粋に喜ぶことが出来ない……
俺たちは、互いの欲をぶつけあっただけ。
一線を超えてしまった。
気持ちをすっ飛ばして、体だけ繋がってしまった
それが、俺たちの関係をどう変えるのかわからない。
体の感覚は残っていても、まだ抱いた実感がよく分からない。だからこれからの事が想像つかない
チエはどんな顔をして目を覚ますだろう
これからどんな目で俺を見るんだろう
不安に似た期待が胸の中で渦巻く。
好きだ。
俺はチエの事が、好きだ