第5章 カ タ チ
ほんとうに、来てしまった……
ヘイブンの言っていたことは、本当だったんだ。
エースの熱い腕の中で、波の音だけが頭を占める。軍艦が進む時の、あの波の音がする
もうすぐそこに、、来ている
…イスカさんも、そこにいる
思わずエースの肩を強く握った。
いやだ。渡したくない。せっかく見つけたのに。せっかく傍にいられたのに
【イスカがこの島に来て、エースを見つけたら…。そんなの分かりきっている。君の想いは届かない。ここから逃げることも出来ない。一生、彼らの幸せの踏み台になるしかないんだ…!!】
脳裏に浮かぶのは、血溜まりの中で叫ぶヘイブンの声だけ。いやだ、いやだと叫んでも、考えない訳にはいかない
エースをどうしたら、行かせずに済む……?
どうしたら、私に振り向いてくれる……?
エースのことが好きで、ここまで追いかけてきたのに、私は未だにあなたの気持ちを知らない……
言ってくれなかった
連れて行ってくれなかった
……本当は、それが答えだって、認めたくないから海軍に入った
強くなって、対等な立場になれば、ちゃんと答えてくれるんじゃないかって……どこかで期待しながら、訓練に耐えてきた
エースが海に出て、色んな人と出会う度、私のことを思い出してはくれないか。迎えに来てはくれないか。そんな子供みたいな考えが頭を占める時もあった。
どうしてもエースの口から聞くまでは、諦められないと心が叫ぶから
いざ再会して、強くなったエースを見て、自分の弱さがまた際立った気がした。気持ちを伝えても、何も変わらないんじゃないか。私のしてきた努力では、まだ届かないのでは…とエースへの想いを奥底に隠したくなった
私の知らない仲間がいて、毎日楽しそうで、私の存在を思い出すことなんてないんだろう。エースの中に、私が入り込む隙間はどこにもないのではないかとさえ思った。
そして、イスカさんとの繋がりを聞いて、益々気分は落ち込んだ。白ひげの船の上では、気丈に振舞おうとしていたが、ヘイブンにスキャンされて弱みにされるほど、私にとって大きな問題だったのだ
エースの想い人が、イスカさんだったなら
本当に、どこにも私の入る隙はない
エースは私を女だと言うけれど、それは“守る対象”であって、あなたを支えるものではないんでしょう……?
ねぇ、私たちの関係って何?