第5章 カ タ チ
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「はぁッ、はぁッ、…」
エースは海岸線をひたすら走った。
チエが目覚める前に、なんとかしてやりたい
しかしその思いは届かず、振動でチエは目を覚ます。
船まであと少しという頃で、チエは悲鳴に近い嬌声を上げた
『あぁっ…、、はっはぁっ、、』
動く度に衣服と皮膚とが擦れて、振動が身体の奥にジンと響く。少しでもそれから逃れようとしてか、チエはエースの肩にしがみつき、ぎゅっと身体を押し付けた
「っ、」
それが誘惑でも、なんでもないと頭の中では分かっていながら、エースの男としての本能が目を覚ましてしまう
ぐっ、と唇を噛みのこらえると、チエの背中に手を回して加速する
「わりぃ、もう少し我慢してくれ…ッ」
『……っ、ぅ、はぁはぁッ』
エースの身に縋り付き、爪を立てる勢いで肩に指を喰い込ませる。物凄い力で掴まれているのに、痛くもなんともなかった。
ただ、ただチエを助けたい。その一心でエースはひた走る
すると、頭だけ見えていたモビーディック号が徐々に姿を現し始め、船上で慌ただしくしている仲間の姿が見え始めた
「エース!!」
誰かが、こちらの存在に気づき、船縁から叫んでいる
あれは……
「ハルタ!!」
「お前が抱いてるのはチエか!?いなくて探してたんだ!兎に角上がってこい!」
やけに緊迫した様子に、首をかしげながら船へ戻った
船へ飛び上がり、チエを抱え直した。なるべく振動を与えないように気をつけたつもりだったが、体に障ったらしく甘美な声が耳元で聴こえる
「チエ…!やっぱり巻き込まれていたのか」
隊長やクルーたちが、チエを抱えたエースの元へ集まる。
どうやら船から突然姿を消し、親父の命令で探し回っていたらしい。
みんなの視線が、腕の中のチエに集まる
ジリ。
不意に胸の辺りに、焼けるような熱を感じて見下ろす。炎は出ていないし、自分の炎で火傷することなどないのに
……いや、わかってる。この焼け付くような痛みの訳を
誰にも、今のチエを見られたくない。
そんな子供みたいな嫉妬心が溢れてくる
チエも、辛うじて残った理性が働いたのか、顔を隠すようにエースの肩口に額を押し当てた