第5章 カ タ チ
「来たぞ。」
鯨の船は、日がすっぽりと海に沈んだ頃に到着した。
「急ぎ、医務室に運びます…!!」
船から忙しなく人が降りてきて、マルコとイゾウを担架に乗せる。
蜘蛛の糸の如く、細く、拙い意識の糸を何とか繋いでいたマルコだったが、仲間の到着に安心したのかの意識が遠退きそうになる。頭がくらりと揺れる中、まだ、ダメだと心の中で自分を叱咤した
その時、視界の隅で一瞬何かが光った
緑色の光だ。まるで雷が轟く前の、カッと明るくなるような光が数百メートル先の崖の上から放たれた
「……今、なんか光った、よい」
「お、俺も見ました」
「え、どこだ?」
イゾウの処置に当たっていた何人かは見逃したらしいが、間違いなく光った。日が落ちてしまった海では、数百メートル先で何が起こっているかわからない。不死鳥の姿になれたなら、すぐに飛んで確認しに行けるのに
「赤だったら、エース隊長だと思ったんスけどね……」
そうだ。すっかりエースの存在を忘れていた。アイツ、今どこで何をしているのか
普段から連絡しろって口煩く言っているのに
掘り起こされた問題に、マルコはまたもや意識の糸を切らしそうなる。担架で船に運ばれながら、エメラルドの光が放たれた場所を見つめていた。
エースには最近越してきた羊飼いを調べてこいと頼んだが、日が落ちても連絡すらないと来た。
だが、エースが本丸を引きやすいというのもまた事実……
このまま任せておくべきか、連絡すべきか
しかし今のマルコに、普段のような冷静な判断力はない。だいぶ血を失って貧血も起こしている。
他の誰かに伝えようと、引き止めようとしたとき遂にマルコは意識を手放してしまった