第5章 カ タ チ
「俺らは偵察隊を監視していて…仲間の様子がおかしいことに気づいて」
「何人かヘイブンの手先に乗っ取られたやつもいやした…!」
それは、イゾウの姿に成りすました奴に違いない。あきらかに変装の域を超えていやがった。能力者の線が濃いだろうな
「もう一人いるよい。精神を入れ替える能力を持ったやつだ。現にこのチエの中身はイゾウだ」
話を聞いた部下たちは、揃って「そんな、まさか」と驚きの声を上げた。無理もない。見た目はどこからどう見てもチエなのだから
少なくとも、この2人は敵の正体を知っている。となれば、すぐにしなければならないことがある
「今すぐ電伝虫を繋げ……!!」
マルコの指示で、縄を解くより先に電伝虫が目の前に現れた。急がなければ偽イゾウに仲間がやられてしまう。何としても仲間の命を守らなければならない。皆、親父の息子で、その親父に1番隊の体調を任された。アイツらの命を預かったからには、背負うものがある
いつものコール音がやけに長く感じた
海楼石の弾丸を食らったままで、筋組織が根本的に働いていないため、止血が追いつかない。血がドクドクと溢れるのを肌で感じながら、コール音が途切れるのを待った
「…………」
「「…………」」
しかし、いくら待てどコール音が鳴り止まない。やがて電伝虫は静かに口を閉じた
「クソッ、、遅かったよい……ッ」
おそらくマルコの予想通り、イゾウに化けた敵に不意をつかれてしまったのだろう。奴らが俺とイゾウをすぐ殺さなかったのは謎だが、ここに来ないとも限らない
「ど、どうなってるんスか、マルコ隊長…!」
しかし状況を知らない部下たちは、2人揃ってあたふたと砂を踏み鳴らした
今この島で生存が確認できるのは、この4人だけ。何をするにもまずは状況を整理しなければ
そのためにマルコは再び口を開いた。
「俺たちは偽のチエを見つけて、後を追っていたら迎撃された。その狙撃手と、チエに化けた奴がヘイブンの幹部で間違いねェよい」
ロープを解き、止血を手伝ってもらう。情けない姿を晒しながらも、有難く処置を受けた
まったく、不死鳥の名が泣いちまうよい……