第5章 カ タ チ
この島は崖の多いボコボコな島で、海岸線は緩いカーブもあれば急な丸みのある崖が飛び出ている箇所もある
その崖からギリギリ見えた俺たちの船。船の先端が少し見えるくらいだったが、走ればきっとすぐだ
エースはチエを抱えて立ち上がる。顔面から倒れたせいで、顔は砂まみれ
滅多に拝めない間抜けな姿に、笑みを零しつつ、砂を払ってやる
『ん、、』
くすぐったかったのか、チエは腕の中で身を捩り、微かにくぐもった声を上げた
いつもは聞くことのない、高い声
無意識に肌が粟立つ
そういえば、海から上がった割にチエの体温が高い
……ヘイブンに盛られた薬の効力は、どのくらい続くのだろうか。もし、眠っていても辛いのなら、起きたらなおのこと辛いのではないだろうか
チエが目を覚ます前に、デュースに見せよう。
仲間への連絡をすっかり忘れ、エースはモビー・ディック号へ向かった
*
チエとエースが、囚われていた頃
マルコたちは……
(クソっ、力…入んねェよい…っ)
自分の仲間たちに縛られ、船まで担がれていた。隣で担がれたイゾウは、チエの姿のまま歯を食いしばって耐えている
情報を吐かせるため、と伝えると部下たちはイゾウを縛る前に止血した。できた部下だと内心褒めつつ、なんで気づかねぇんだと同時に罵る
違和感はかなりあったはずだよい
街から離れ、浜辺に着くと、部下たちは2人をそっと下ろした。
「?」
不思議がっていると、部下のふたりがマルコとイゾウの前で膝をつき頭を下げた
「すいませんっ、マルコ隊長!今すぐ解きます!!」
「船へ連絡したので、チエは着き次第医務室へ運びます!!」
突然のことで、マルコは思わずたじろいだ。内心気づけと言いつつも、いざこうして言われると逆に疑いたくなる
しかし、2人の緊迫した表情にその疑いも薄れる