第5章 カ タ チ
チエの体から放たれるエメラルドの雷鳴が表していたのは
拒絶
雷撃はチエの体を支えていたエースでさえ跳ね除け、一撃でヘイブンを悩殺した。
その一瞬の出来事に、唖然として口が閉じなくなる
それが誰の力なのかもわからないまま、チエとエースは海へ真っ逆さまに落下した
もちろん力の主であるチエ本人もわからない。
チエの本能が呼び起こされたことによって、この現象が成り立っているのだ
「チエ!!」
必死に手を伸ばすエースと、目を細めながら空気圧に耐えるチエ。まだ拒絶は続いていた
(クソッ、近づくほど磁石みてェに跳ね返される…っ、、)
なぜこんな力が働いているかなど、検討もつかないままエースはひたすら手を伸ばす。炎を噴出して、スピードを増しながら、見えない壁に突進した
海までもう間もなくたどり着く。
そうなってしまえば自分は一巻の終わり
しかしエースにはそんなことを考える余裕などない
(届かねェ…ッ、なら、届かせるしかねェ……!!!)
無茶苦茶な論理でも、非現実的でも、なんでもいい。とにかくチエを守らなければ
エースの一心な願いは、炎となり、チエの拒絶を破った
「……!チエ…」
海に叩きつけられる、コンマ数秒のところで、エースはチエの頭を守るように抱きしめた
訪れる衝撃の前に聞いた、ひどく優しい声。海に入ってしまえば、ひとたまりもないとわかっているはずなのに
私のせいだ
私が弱かったから…
私のせいで、エースが、、
海は以外にも浅かった。とはいえ水深数メートルで、海底に背中をつけるとさすがに息苦しい。
目を開けても塩水が染みてくるばかりで、まともに視界が開けやしない
それでも、傍で一緒に沈んだ彼の姿はすぐに捉えた。
体はまだ辛いし、熱い。
でも水の中なら、刺激をあまり感じない。
大丈夫、泳げる
私だって、エースを守れる
体制を整え、柔らかい砂の海底を蹴る。真っ暗な海の中でも、エースの姿だけは確実に捉えることが出来た
見えなくてもわかる。そこにいる。
妙な確信をもって手を伸ばせば、人より高い体温を感じる。手探りで両腕の下に腕を通し、一気に上昇した