第5章 カ タ チ
「やめろ!それ以上チエに触るんじゃねェ!!」
怒りに思考はどんどん燃え盛って、言葉を選べなくなってくる。それを逆手に取られているようで、焦りとイラつきに拳を握った
(どうしたら、いい。どうしたら、チエを傷つけずに済む…!!)
「俺のものアピールのつもりかい?」
しかしDr.ヘイブンは、チエの髪をつかみ上げたまま、首を傾げた
また淡々とした表情に戻っている
「……いいから、その手をどけろ」
ヘイブンの淡々とした表情をみて、エースも冷静さを取り戻そうと、一呼吸つく
何を答えても、奴のいいようにしかならない。何も言うな。このまま、怒りに身を任せていたらアイツに隙を見せるだけだ
「答えられないのかい?まぁ、たしかに君のものでは無いけれど」
「ましてや、お前のものでもねェ」
「“今”はそうかも。けれど、“これから”はわからない。だってここにチエがいるから」
自分の手が届く所にいる限り、逃さないつもりか
それなら、手さえ伸ばせないように叩きのめすまで。
エースは意を決して地面を蹴った
まずは懐に入る。
ヘイブンも覇気を使っていたせいで、今までの攻撃は直接的なダメージにはならなかったし、俺も警戒して中距離を保っていた。だが、ロギアにとって覇気は弱点なんかじゃねェ
俺自身の覇気で上回れば、お前の覇気はもう通用しない
距離を詰めると、案の定覇気を纏った蹴りが体を真っ二つにする。エースの覚悟の賜物か、吹っ飛ばされることなくヘイブンの足は炎を切った
「炎戒!!」
自分を中心に、炎の円を作りだす。ギリギリ、ヘイブンがそのサークルに触れる範囲で火力を強めた
「ぐっ、、!?」
自分の覇気が、ものともされなかったことに衝撃を受けたのか、天井にまで伸びる火柱に身を焼かれていた
その隙に炎を点した手で、熱しながらチエの拘束を外す。
『あっ、、まっ、、はっ』
少しの振動も、身体には毒。拘束具を焼き切るためとはいえ、熱かっただろう。
しかし、響くのは痛みに苦しむ声ではない。
エースは無意識に眉間の皺を濃くした