第5章 カ タ チ
「チエを返してもらう」
蹴り飛ばされて、壁に埋もれたエースは、同じく怒りを露わにして瓦礫から出てくる
「……いいよ。取り返せるものなら」
その挑発が、2人の戦いの合図
目の前で火花が散った
「十字火…!!」
十字に組んだ指から、ものすごい圧の炎が放出される。が、それを予めスキャンして情報を得ているヘイブンは、軽々と避けてしまった。
しかし、その程度で攻撃をゆるめるエースではない。
距離を詰め、肉弾戦の合間に近距離から炎の攻撃を繰り出した
「蛍火!」
蛍のような淡い光が発生し、不規則にヘイブンに向かって飛んでいく。これは交わせまいと、エースも高を括っていた
が、ヘイブンは広がった大量の血溜まりを利用し、蛍火を防いだ。
力強く血溜まりを踏み込むと、その勢いで血が跳ね上がり、視界すらも遮ってしまった。その隙を狙って真正面からヘイブンの攻撃
エースも不意をつかれて、その攻撃を食らってしまった
「…そろそろだ。」
「…がっは、、…何がだよ」
ドクン
『…っ、、……はぁっ、、』
なんだろ、、体が……
ヘイブンの視線は肌に突き刺さる程痛いのに、ゾワゾワと肌が粟立って止まらない
息が上がってる
なんか、体が……あつい…
チエの様子がおかしい事に、エースも気づいたらしい。ヘイブンへの怒りもある。けれどそれ以上に、苦しそうにするチエへの心配が上回った
「どうした、チエ!!」
『…はぁっ、はぁっ、、くるし…っ、、』
辛そうな表情を浮かべるチエに、拳をギリッと握りこんだ。息苦しそうなだけで、どこかが痛むわけではなさそうだ。先程飲ませた液体のせいだと、予測する
「何しやがった…ッ!」
ヘイブンを睨みつけると、彼は今までの表情と一転して真顔になっていった
「媚薬の原液だよ。僕特製のね」
「は……?」
そんなものを飲ませて、一体何をするつもりだったのか
エースの頭の中は、一気に怒りで湧いた
そこからは、エースの怒涛の攻撃が止まらなかった
好きな女に、恐怖を植え付けられ、その上体まで貪るつもりだったのか。チエの体と心に刻み込まれた傷は計り知れない。そして、それを一刻も早く止めてやれなかった自分に腹が立って仕方がなかった