第5章 カ タ チ
「ふふふ、存分に味わえ。そして苦しめ。自分が女だという現実に。切り離すことの出来ない、女の弱さに溺れるといい…!」
私を解体する時に浮かべていた、あの楽しそうな顔だ。あの笑い声だ。
全部、全部が頭の中にこびりついて……
気持ち悪い
『うっ、、、』
嘔吐く中、ヘイブンは絶えず笑い続ける。
気持ち悪さがどんどん増してくる
いやだ…っ、、聞きたくない、、
「チエに何したって、聞いてんだろッ」
「ぐぉッ……!?」
雷鳴の如く、気持ちの悪い笑い声を遮った轟音。辺り一面を明るく照らす、真っ赤な炎
炎の中に間見える、温かなオレンジが今日は見当たらない。
怒ってる。怒ってるんだ
いつもに増してどこか赤黒く、温度も高い、灼熱の炎。骨まで焼き尽くすような紅蓮の炎だ
「チエは返してもらう。お前もぶっ飛ばす…!」
メラメラと燃える拳は、彼の怒りと決意を顕にしていた。
まだ、体は震えている。
違和感もある。
でも、怒ってくれるエースを見て、心の底から安心している……
さっきは思い出すことさえ出来なかったのに、今はエースだけが頭の中を占めている
『…っ、、エース…っ、』
名前を呼ぶだけで、こんなにも胸がジンと熱くなる。鼻の奥がツンとして、溢れそうになる涙を瞬きで潰した
「……スキャン…!!!」
しかし、まだ絶望は続く。
エースに殴られ、血溜まりに身を沈めていたヘイブンの目が変わった。
ギラリと光る眼光は、エースを捉え、睨みつけて離さない。ヘイブンの執念みたいなものがエースにぶつけられていた
多重人格を疑うほど、ヘイブンの変化は目まぐるしがった
「……フフフ、何をしたかって?」
笑いながらも、ヘイブンの動きは早かった
ものすごいスピードで、エースの下から抜け出し、蹴り飛ばす。
距離を取ったところで、その視線がこちらに突き刺さる
『…ひっ、、』
「怯えるなよ。女は笑って、乱れて散るのが美しいんだから」
口調も、今までより強気な言い方に思えた。エースに向けられていた鋭い眼光は、チエにも向き、彼女はただただ悲鳴のような息を飲んだ