第5章 カ タ チ
「そんな君に、最高の屈辱をあげよう」
『うぐっ、、』
片手で顎を掴み上げられ、喉の辺りの皮膚が力強く引っ張れる
反射的に噛み締めた奥歯が、ギリリと音を立てた。
『嫌だッ、触るなッ!!』
掴みあげた手は、あの地獄のような拷問を呼び起こさせた。噎せ返るような恐怖心が、一気に全身を駆け巡る
『いやだ…っ、、もう、いや……ッ!!』
叫び声を上げた刹那。
薄暗い部屋で、確かに空気が波打った
ぐにゃりと歪む視界、脳を直接揺さぶられるかのような振動がチエの身に襲いかかる
(な、なに……っ)
「チエ──ッ!!!」
そんな中、轟音と真っ赤に燃える炎の塊がチエの名を呼びながら、扉を突破ってきた
『……っ、、エース…っ!!』
「チエ!!」
全身から炎を吹き出し、鋼鉄の扉は変形して吹っ飛んだ。エースは私の姿を目に移すなり、すぐ青筋を浮かび上がらせてヘイブンを睨みつけた。
「てめェ、チエに何を……!!」
「ちょうどいいところに」
しかしヘイブンは特に驚いた様子もなく、エースの方を見て口角を上げた。室内の空気が一気に張り詰める中、先程感じた歪むような感覚は消えていることに気づいた。
そんな間もつかの間。
ヘイブンが三日月に歪んだ口のまま、こちらを振り向いた
『んぐっ!?』
「っ!おい!!」
歯にガツンと、ガラス瓶が当たって、直ぐに液体が口の中に流し込まされる
歯を食いしばり、振り払おうとしても、顎を掴まれていて振り払えもしない…っ、、
「やめろ!!」
拳を炎に変えたエースが、鬼の形相でヘイブンに飛びかかった。
おかげで拘束を逃れ、それ以上液体を飲むことは防げた。しかし、転げ落ちた瓶の中身はほとんど空っぽの状態
それを見たヘイブンが、チエの作った血溜まりの中で高笑いしだした。組み敷いたエースも、周りの様子にすぐ気づいたらしい。未だ笑うヘイブンの腹を思いっきり殴って言った
「……お前、自分が何したかわかってんだろうな」
いつもより何倍も低い声に、ドキリと心臓が跳ねた
(……?)
何か、おかしい
体が変だ
ドクリドクリ、と心臓が跳ねる
心做しか息苦しさも感じる