第5章 カ タ チ
「出世したらしい。どこぞのエリートコースの海兵が死んだらしいからなぁ。君が奪い取った椅子がもう取り返されるかもしれないね」
ニタリと浮かべた笑みに、顔が引き攣った
確かに、イスカさんの失脚により、私は今の地位を獲得していた。それが同じ形で奪い返される
同じ女海兵同士なら、痛くも痒くもなかった、、
でも、今……ここに来たら…
この島には、エースがいるのに
…2人が、出会ったら、、
そんな未来は来るはずがないと、考えないようにしていたのに。
もし、本当に、再会を果たしたらエースはイスカさんを選ぶのだろうか
スカルから2人の話を聞いた時、特別な間柄だったんじゃないかと疑った。そうとしか、思えなかった。
そんなふたりが、これからこの島で出会ってしまったら、、きっと………
(…いやだ)
「イスカがこの島に来て、エースを見つけたら…。そんなの分かりきっている。君の想いは届かない。ここから逃げることも出来ない。一生、彼らの幸せの踏み台になるしかないんだ…!!」
この絶望的な状況の中で、私はただ心のなかで、いやだと叫び続けている。拒絶することでしか、もう自分を保つことが出来ない
受け入れたくない
けれどヘイブンは、私の嫌がることをとことんすると宣言した。その言葉通り、私の心に指を突っ込んで、ぐいぐいと広げてくる
「君がもっと、強かったら」
やめろ
「君がイスカよりも優れていたら」
やめろ
「そもそもあの時、君がエースに置いていかれなければ」
『やめろ…ッ!』
私の心を揺さぶらないでくれ
わかりきったことを、言わないでくれ
「だって事実じゃないか」
“事実”
その言葉が、ずっしりと胸にのしかかる。言い返せないから、余計に重い。そんなものを、求めているわけじゃないのに、、
拒絶の言葉さえも、ヘイブンは聞き入れてはくれない。何食わぬ顔で、白々しくもまだ私を追い詰めてくる