第5章 カ タ チ
奴の目的はなんだ?
白ひげのシマで薬をばら撒き、儲かることか?
違う。
尻尾を見せず、今まで通り隠れてやった方が合理的だ
白ひげを倒すためなのか
主戦力の一番隊と二番隊をここで削り、徐々に白ひげの力を削いでいくつもりなのだろうか
……だが、この男が力や名誉欲しさに危険を犯すとは思えない
過去の経歴や、人物像なんて知らないが、もっと狡猾で現実的な男だと思っていた。
そこいらの海賊のように、海賊王を夢見るとは到底思えないのだ
『………』
兎にも角にも、敵と対峙した以上取るべき行動は二つに一つ
逃げるか、戦うか
「逃げるのは無理だね。戦うのもオススメしない」
『……』
Dr.ヘイブンはまるで私の思考回路を読み取るかのように、飄々と語り出す。先程までの丁寧な口調とは違う
やはりさっきのは演技か
『……ここは牧場の地下だと言ったが、違うな』
「なぜ?」
『ここは一定の時間になると、無くなる空間だからな』
「………」
地面の濡れ具合、岩の質感、空間の作り
これは紛れもない、洞窟だ。
そしてここは満潮になると海水に満たされ、なくなってしまう
だからここに電気を通していない。牧場の地下だと言うなら、せめて通路までは付けるはずだ。
「……少し違う」
『…何?』
「ここは牧場の地下だし、君の言う通り洞窟でもある。入口は何個もあって、モグラの穴みたいに繋がっている」
『…迷宮か、だから逃げるのは無理だと?』
「それだけじゃない。ここに海水が入り込まないように、海に面する扉は全て閉ざしてある」
なるほど。だから外側から見ても洞窟が見つからなかったのか
にしても、そこまでの作りを短期間で使ったとは考えにくい。
つまりここは、Dr.ヘイブンの根城の1つ…
『…私を殺すつもりか』
「どうしてそう思う?」
『私ならそうするからだ』
今まで尻尾を一切見せなかった。海軍が断片的な情報から、名前とその存在を割り出し、秩序を乱す悪として手配書をばら蒔いた
それでも見つからない。
情報も一握りしか得ることが出来ない
そんな戦略的で、徹底した男が、今ペラペラと根城の情報を話している。私に話していいと判断したのは、話しても無意味だと判断したからに違いない