第5章 カ タ チ
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『…うっ、………いった』
意識が浮上するなり、痛みが全身にガンガンと響き渡った
特に頭と左足が痛い…
どこかにぶつけた……?そうだ、爆発が起きてぶっ飛ばされたのか
…暗い
洞窟か……?
目を凝らすが、まだ闇に慣れず見えない。じっと息を潜め、あたりの気配を探る。
『…!』
誰か、いる
近づいてきてる。
ぺたぺたと手探りで足元を確認する。少し濡れた岩場だが、足場としては大丈夫そう
戦いになっても、これならなんとかなる
「なんだ、もう目が覚めたか」
(うっ、)
岩陰からひょっこりとランプが顔を出し、洞窟内に声が響く。通路でもあるのか、なんの前触れもなく岩陰から突然現れた。おかげで暗闇に慣れ始めていたのに、急な光に目が眩む。
声の主は、男。落ち着いた声と話し方。心理状態は落ち着いている
ランプの明かりに照された顔も同様に落ち着いていた。
薄暗い茶色の巻き毛に、眼鏡。焦げ茶色のベストとその下には袖をまくった白いシャツ。ずっと着ているのか、少し寄れて汚れも目立つ
比較的、温厚な顔立ちと声色に警戒心が根こそぎ持って行かれそうになる
「浜辺で倒れていたんですよ、外はすごい爆発で私も巻き込まれたんです」
『…ここまで運んでくれたのか?』
「ええ。私は爆発で牧場から海へ落ちたんですが、上がってきたらあなたが倒れていたので」
『ここは…?』
「牧場の地下ですよ」
警戒心を解かせるためか、男は薄く笑みを浮かべる。
…こんな岩だらけで、明かりもない場所が地下?
整備もされていないし、部屋として機能している訳でもない。そんな所に私を運んだというのか
…人助けで、私を助けたにしては妙に引っかかる
さっきも聞きとりずらかったが、「もう目が覚めたか」と言っていた。助けた相手に使う言葉使いには思えない。それに、意識を手放した状態のまま放置しておくだろうか?