第5章 カ タ チ
「…なん、で、」
「マルコッ!」
マルコはチエの隣に並ぶように倒れた。チエは何故か苦しそうに息を荒らげながら、マルコの名を呼ぶ
「しっかり、しろっ、…あれは“俺”じゃないっ」
「どう、いう……」
「よく見ろ、さっき撃たれた傷がアイツには、ねぇ!」
チエの言う通り、イゾウの体は綺麗なままだった。撃たれた傷もなければ、砂埃もかかっていない
目の前にいるチエが、イゾウだとして、一体どうやって……
「何が、どうなってやがる……っ」
イゾウは依然として、冷酷な表情でこちらを見下ろしている。攻撃する素振りもなく、ただ突っ立っていた
「隊長!!」
そんな時、聞き慣れた声と何人かの走る音が聞こえてきた
合流させようと散らせた部下たちだ。
まずい、このままじゃ
「お前ら!!気をつけ……、ッ!!」
「がっ、……!!」
「「「!!!」」」
力の入らないまま、それでも何とか部下に状況を伝えようと声を上げた途端
イゾウはなんの躊躇いもなく、マルコとチエを撃ち抜いた。
それを見て部下たちも唖然とする
「気をつけろ、敵がマルコとチエに化けてやがった」
(何を……!!)
抗議しようと再び痛みに悶えながら口を開く
「……!!」
が、どんなに絞り出そうとも掠れ声の1つも出ない
撃ち込まれた弾丸の所為なのか
驚く程に、部下たちに語りかけるイゾウは普段のと変わらない立ち振る舞いをしていた。声や顔つき、仕草までも
さっきまでの死人みたいなのとは違う
「情報を吐かせる。お前たち、コイツらを縛って船に連れてけ」
「はいっ」
部下たちも信用しきってしまった、
せっせとマルコたちをロープで縛ると、何人かで肩に担いで歩き出す。
海楼石の弾丸を食らったマルコは、もうまともに動くことさえ出来なくなった。イゾウも3発もの弾丸を食らって、痛みに悶えている
何とかして、部下たちに伝えなければ
その意思だけで意識を保っていた