第5章 カ タ チ
「2人……じゃねぇな。気をつけろ、相当な腕だぞ……っ、」
マルコはイゾウの様子を伺いながら、一気に上空へ駆け抜けた。一面は青い空。路地にいては照準を合わせられてしまう。だが、空中はこっちのテリトリー
「どの辺かわかるか」
「…っ、あの建物だ!3時の方向に見える、広場から4番目、ッ、おそらく建物の中だ」
「………一か八か。しっかり捕まるよい!!」
イゾウがしがみついたと同時に、マルコは勢いよく炎の羽を飛ばした
目標はイゾウが狙撃された辺りの建物。そしてその周辺一帯
爆発音と、建物の崩れる音が鳴り響く。しかしマルコはすぐさま体を逆方向に傾けた
「狙撃手はいいのか!」
「こっちが先だよいっ」
そう言うと、広場から遠ざかっていくチエに向かって、猛スピードで突っ込んだ
「海兵ってのは、そんな易々と逃げていいモンなのかよい」
人がいるかもしれない街の路地で、あんなに派手に建物が崩れたというのに、一目散に逃げる海兵などいるものか
そうでなくとも、騒音に一度は立ち止まるか振り向くはず。しかしチエはそんな素振りを見せなかった
地割れの中心で、マルコは突進したチエの背中を踏み抑えた。
舞い上がる土煙の中、地面に這い蹲った影に向かって問うが、答えは帰ってこない
イゾウは懐から銃を取り出し、密かに構えた
「……っ、はな、せ」
「変装にしては精巧な作りだよい。お前、悪魔の実の能力者か」
「ち、が……マルコッ、俺だッ!」
俺?
クエスチョンマークを浮かべた瞬間
ドンと体に何かが突き刺さる違和感。衝撃で前に傾く体
なぜ
頭の中がぐるぐると回った
確かに這い蹲っているのはチエで、俺の後ろにいるのはイゾウだ。さっきから一緒にチエを追ってきたはずなのに、どうしてお前の銃口が、
俺に向いているんだ
膝を着きそうになる中、マルコは見た。
今まで見たことのない顔。死体のように血の気がなく、恐ろしく冷たい表情で、こちらを見下ろしていた。
手元の銃口から昇る煙はまだ新しい。
イゾウが撃ったのは間違いない、
長らく感じることのなかった銃弾の痛みが全身に駆け巡り、力が抜けていく
ロギア系の俺に通用する弾丸ということは、海楼石出できたものか