第5章 カ タ チ
うどん、かぁ。いいものを知った
私も作れるかな、
軍のシェフたちの腕は、とってもいいからきっと一度食べただけで作れるんだろう
効率重視な人たちばかりだから、リクエストしたって作ってはくれないだろうけど。
……誰かを思った料理なんて何年ぶりに食べたんだろう
じいさんの船の料理は美味しかったけれど、ボリューム重視だし、軍の食堂は栄養重視、山賊のご飯は豪快で素材の味そのものだった
私自身が料理する時は、どうだったんだろう
誰かのために料理を作るなんて、しばらくやってない
この船に置いてもらったお礼に何か作ってみる?
いや、全員分は到底作れないし食べて貰えないかもしれない。それだと食材が勿体ないし、台所を仕切るサッチに申し訳ない
でも、私に良くしてくれた人たちには何かお返ししたい。
……エースは、作ったら食べてくれるかな。
「よっ。考え事か?お嬢サン」
『!』
首の後ろにひやっとしたものを当てられ、肩が跳ね上がった。吃驚して振り返ると、肌蹴た胸元がすぐ側にあり、ほんの少し見上げただけで私の視線は彼の顔ドアップにロックされた
『…近い』
「相変わらずつれねェな。エース以外には」
わざとらしく強調して言うあたり、癪に障る。
「そう嫌そうな顔するなよ、傷つく」
『嘘を言うな』
差し出された瓶を受け取り、栓を抜く
先程首に当てられたのはこれか
匂いからして酒ではない。りんごジュースか?
「美味いだろ、それ」
『あぁ、色んな味がする』
「そいつは特製の媚薬だ」
『ぶふっ、げほげほッ…!なんてものを…!!』
盛大に噎せた。勢い余って鼻の方まで飲み物が来たぞ、めちゃくちゃ痛いじゃないか、、
「あはははっ、ジョーダン通じねぇな!」
『ケホッ、、悪い冗談だな、私を揶揄うな』
イゾウが本気でこんな真似するわけ…………ないとは言いきれない、、、けれど………やったとしても、遊び半分だと信じたい
イゾウはまだお腹を抱えて笑ったまま。もう、早くどこかへ行け。こっちはまだ鼻が痛いのに
「そうだ、、本当に欲しくなったら言えよ。あるから」
『ぶっ、ゲホッゲホッゲホッ……!イゾウ!!』
「これは本当。じゃーなー!」
心底楽しそうに笑って去っていく。私を揶揄うのはそんなに楽しいのか